約 1,861,607 件
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1921.html
前ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある異世界の上琴事情 EXTRA EDITION_2(上条さん地獄の10日間 二日目:美琴初めてのエプロン編) 地獄の補習期間に入って三日目。 補習期間であるにも関わらず、上条当麻は幸せだった。 美琴が上条の勉強を見るのはコレが初めてではない。 今までにも何度か機会があったのだが……。 その時はどうしても恥ずかしさが先に立ってしまい、キツく当たってしまう事があった。 だが、今は違う。 美琴は上条を支えたいと願い、上条も美琴に応えたいと思っている。 コレがこの二人の本来の姿なのだろう。 イヤ……チョット、違うな……。 アレが、あの仕掛けがなければ……もっとイチャイチャしてるはず。 (上琴)「「ウルサい!!!」」 そんなに恥ずかしがらなくても……。 今日は『イチャイチャ』させてあげる予定なんだけどな……。 (琴)「ホント!?」 (上)「もしウソだったら、タダじゃ済まさねえ」 ハイハイ……。 という事で、今日は土曜日。 午前中は学校に行きそこで補習。 昼からは【喫茶店エトワール】の裏で課題の勉強である。 だが、その前に……シッカリ二人でイチャイチャお昼ご飯タイムを満喫してたりする。 (琴)「ハイ、当麻。ア~ン」 (上)「ア~ン。……モグモグ……うん、美味しいぞ」 (琴)「ホントはさ……私が作ってあげたかったんだけど……午前中に外せない用事があって……」 (上)「イイよ、イイよ。その気持ちだけで嬉しいよ。それに……美琴に『ア~ン』して貰うだけで……」 (琴)「えっ?」 (上)「いつものマスターの料理が数倍……美味しくなるから……(テレッ//////////)」 (琴)「(ポンッ!!!////////////////////)エヘッ、嬉しい。……ねぇ……当麻。(じーーーーーーーーーーーーーーッ)」 (上)「(こっ、この視線は……?)……あッ、そっ、そうだ。……じゃあ、美琴にも……ア~ン」 (琴)「ア~ン。……モグモグ……エヘッ、美味しいよ。当麻」 (上)「アッ、ほっぺにソースが……ペロッ……(チュ)……」 (琴)「ふえッ!?」 (上)「アッ、ごっ、ゴメン……。そっ、その……つい……」 (琴)(ほっぺに『ペロッ』て……、その後……軽く……き、キス……?) (上)(し、しまった……。やり過ぎたか!? でッ、でも……美琴がカワイすぎて……つい……) (琴)『(ボンッ!!!)プシューーーーーーーーーーーッ!!!』 (上)「わッ!? みっ、美琴ぉッ!? ……って、アレ? 漏電が、電撃が……来ない?」 (琴)「エヘ……、エヘ……、エヘヘ……」 (上)「オイッ!? 美琴ッ!! シッカリしろ!!! ……ん?(オレ、いつの間に右手を……? もう、ほとんど条件反射になってきてるなあ……)」 (琴)「エヘ……、当麻に、……当麻に、食べられちゃったぁ……」 (上)「え゛?」 (琴)「もう……お嫁に行けない……。当麻に……、当麻に食べられちゃったから……当麻のところにしか、お嫁に行けない……」 (上)「う゛……」 (琴)「当麻に食べられちゃった……、私、もうダメ……」 (上)「オイッ! 美琴ったら!? シッカリしろぉ~~~~!?」 (琴)「ふにゃぁ~~~~……」 もう、桃色空間全開である。 それを監視(覗き見とも言う)しているアッコさんも……。 (ア)「もう、好きにして……」 と、既にサジを投げている。 コレも勉強中の『イチャイチャ禁止令』の反動なのだろう。 それにしても……あの仕掛けの反動はスゴいな……。 ある意味逆効果になってるんじゃ……。 (上琴)「「あうあう……」」 そんなこんなの騒動もあったが、時間になればあの山のような課題に取り組み始める。 ……と言うより、取り組まないとまた例の仕掛けが作動してしまうので、やらない訳には行かないのだ。 それに課題をこなしていく上で、ペナルティ・ボックスに上条が閉じ込められるのはタイムロスに繋がるのだから、出来る限り避けなければならない。 それらの理由で、二人はペナルティを科せられないように、必死に課題に取り組むのであった。 そして、夕飯近くになった頃……。 チョットした事件が……。 (上)「ウーン……」 (琴)「あ、そこはね……ココをこうして……」 (上)「え?……ふんふん……」 (琴)「そしたらこうなって……」 (上)「うんうん………」 (琴)「そしたら、どうなる?」 (上)「えッ?」 (琴)「全部私がやっちゃったら意味がないでしょ?」 (上)「うッ……」 (琴)「ほら、頑張って」 (上)「う~ん……」 (琴)「……」 (上)「あ……もしかして……」 (琴)「……」 (上)「ココをこうすれば……」 (琴)「そうそう、やれば出来るじゃない、当麻」 (上)「なるほど、なるほど。……美琴の教え方がイイからだよ」 (琴)「当麻が頑張ってるからだよ。エヘヘ」 『ピピー、ピピー、ピピー、ピピー』 (マ)『嬢ちゃん、すまねえがチョット店まで来て貰えねえか?』 マスターがいきなりインターフォンで呼びかけてきた。 (琴)「えッ!? 何? 何なのッ!?」 (マ)『ビックリさせてすまねえな。とりあえず店まで来てくれ。そしたら分かるから……』 (琴)「あ……ハイ……。一体何だろ?」 (上)「マスター、かなり慌ててたみたいだけど……」 (琴)「とりあえず行ってみるね。その間、ちゃんと自習しててよ」 (上)「ハイハイ、分かってますよ……」 (琴)「あ、そうだ! えいッ!!!」 (上)「えッ!? こっ、コラッ!? 美琴ッ? こんな風に抱きついたら、またペナルティが……」 (琴)「イイじゃない。どっちみち離れるんだもん。その前にちょろっとスリスリしとくのぉ~」 (上)「あ、あの……オレがペナルティ・ボックスに入る事は……考慮無しですかああああああああああぁぁぁぁぁぁッ!?」 叫び声と共に、上条はペナルティ・ボックスへと吸い込まれていった。 (琴)「15分経つ頃には戻ってくるからねぇ~」 そう言って、ご機嫌になった美琴は店の方へと歩いて行った。 独りペナルティ・ボックスに閉じ込められた上条は……、『シクシク』と泣きながら自習に勤しむしかなかった。 (上)『ふ、不幸だ……』 仕方無いよ。運命だもの……。 さて、店の方に移動した美琴は……信じられない光景を目にする。 何と……店がお客さんで、満席になっていた。 (琴)「ぅ、ウソ……? こんなの……信じられない」 (ア)「美琴ちゃん、サラッとキッツいコト言わないでくれる?」 (琴)「あ、アハ……アハハハハハ……」 (ア)「とは言え、ホント大忙しなのよ……」 (琴)「あ、あの……マスターは?」 (マ)「ああ……嬢ちゃん、すまねえな。急に呼び出したりしてよ」 (琴)「あ、マスター?」 (マ)「見ての通りなんでな。とても上条と嬢ちゃんの晩飯を作れそうにねえんだ。悪いがオレの代わりに作ってくれねえか?」 (琴)「え?」 (マ)「悪いが頼むよ。キッチンは裏にもあるからさ。材料は好きなもん持ってってイイから」 (琴)「あ……ハイ。分かりました」 (マ)「実はこの後、黄泉川がさ……若いの連れて来るって言ってやがるんでな。その準備もあるんで手一杯なんだよ」 (琴)「え? 黄泉川……さん?」 (マ)「昨日の一件が原因だろうな。あのバカ……言うなって言ってるのに……」 (琴)「でも……マスター、嬉しそう……」 (マ)「んなことねえよ。まぁ、若えのが来るのはイイんだけどな。大騒ぎになるのが目に見えてるからなぁ……っと、こうしちゃいらんねえ」 (ア)「アンタ、次のオーダー。カキフライ定食でデザートはコーヒーゼリー。アフターはコロンビア、それから……」 (マ)「……アイよッ。んじゃ、嬢ちゃん頼んだぜ」 (ア)「エプロンは裏のロッカーに入ってるから、それ使ってねぇ~」 その忙しさに圧倒される美琴。 だが、マスターとアッコさんはテキパキと接客をこなしてゆく。 それを見た美琴は下手な手伝いはジャマになると判断し、裏からキッチンに回って必要な材料を調達する。 (琴)「さっきカキフライ定食がどうとか言ってたっけ。じゃあ、今夜のメインはそれにしよっと」 (琴)「あ、そうだ……。当麻に言わなきゃ……」 そう呟くと、美琴は勉強している部屋の前で上条に呼びかける。 まだ15分は経っていないので、上条はペナルティ・ボックスの中だ。 (琴)「当麻ぁ~、聞こえるぅ~?」 (上)『聞こえてるぞぉ~』 (琴)「お店が忙しくて、晩ご飯を私が代わりに作る事になったから、自習しててねぇ~」 (上)『ええッ!? み、美琴が作ってくれるのか!?』 (琴)「うん、そうだけど?」 (上)『そ、それって……もしかして……エプロン姿も……』 (琴)「あ……うん、見せたげる……ね……」 (上)『おッ、オレッ! 頑張るからッ!!!』 (琴)「あ、うん。じゃあ、頑張ってね」 (上)『ああッ!!! うわぁ~、すっげえ楽しみだなぁ~~~!!!』 (琴)「……どうしてか知らないけど……エラく張り切ってるわね? ……ま、やる気になってくれるのはイイことだわ」 そう独り言を呟くと、美琴は勉強部屋の隣にあるキッチンに向かう。 そして、ロッカーからエプロンを取り出して制服の上から羽織り、料理を始める。 簡易のキッチンとはいえ、必要なモノは全部揃っていた。 美琴はテキパキと準備を進めていく。 下ごしらえを終え、後はご飯が炊きあがる時間に合わせてフライを揚げるだけである。 (琴)「うん、コレで準備OKね。じゃあ一度、当麻の様子を見に戻ろうかな?」 そう言って、キッチンを後にして勉強部屋に戻る美琴。 だが、この後起こるハプニングを全く予想だにしていなかった。 (琴)「『ガチャッ』当麻ぁ~、頑張ってる~?」 (上)「頑張ってます……よ……オオッ!?」 (琴)「え……どしたの?」 (上)(い、いきなり……かよぉ~!? でッ、でも……夢にまで見た……美琴のエプロン姿が……、今、目の前にぃ……。お、お、落ち着け、落ち着けオレッ!!!) (琴)「ど、どしたの? 当麻……? 目が……怖いわよ?」 (上)「え? あ、イヤ……アハ、アハハハハ……(まさか、美琴のエプロン姿に我を忘れかけていたとは言えない……。でも、カワイいなぁ……)」 (琴)(なッ、何? 当麻が変なんだけど? 目も血走ってるし。あ……、そう言えば、エプロン姿が見たいって……さっきも言ってたわよね?) (琴)「ど、どうかな?」 (上)「えっ!? なッ、何が?」 (琴)「だって……、見たがってたじゃない? 私のエ・プ・ロ・ン・す・が・た。エヘッ」 そう言うと、美琴はクルッと一回転して頬に人差し指を当てて、カワイくウィンクをしてみせる。 だが……それがいけなかった。 (上)『ズッキューーーーーーンッ!!!』 (上)「美琴ッ!!! おッ、おッ、オレッ!!!!! オレッ!!!!! ……もう、……もうダメだ!!! みっ、美琴ォッ!!!!!『ギュッ!』」 (琴)「キャッ!? えッ!? とっ、当麻ッ!? ……ふにゅう」 (上)「ごっ、ゴメン!! で、でも……美琴が、エプロン美琴がカワイすぎて……オレもう、抑えが……『ギュウッ!!!』」 (琴)「ふええッ!? 当麻ッ!!! そっ、そんな……いきなりッ!?(こっ、心の準備が……あッ、そんなに強く抱き締められたら……ダメになっちゃうよぉ……)」 どうやら今の上条さんには、『美琴のエプロン姿』は刺激が強すぎたようです……。 しかし……上条さんの『エプロン属性』……かなり重症のようですね。 でも、お二人さん……何か忘れてません? (琴)「ふにゅ……、当麻ぁ」 (上)「ゴメン、美琴……。……でもオレ……」 (琴)「うん……」 (上)「美琴、可愛すぎだよ……オマエ……」 (琴)「エヘッ、嬉しい……。ねぇ……当麻……」 (上)「うん?」 (琴)「わッ、ゎたっ、わたッ、私とそのッ、けっ、けけけけけけけ結婚したら……、毎日見られるよ……。エプロン姿……」 (上)「そんなコトになったら、上条さんは幸せ過ぎて死んでしまいますですよ……。ハイ……」 (琴)「バカ……。死んじゃったら意味ないじゃない……」 (上)「言葉の綾なんですけど、その通りでせうね。……だ、だから……」 (琴)「だから?」 (上)「死なないようになるまで、待って欲しいんでせうが?」 (琴)「え……?」 その時……。 『ガシッ』 上条は何かに両肩を掴まれる。 (上)「え゛?」 まだ勉強時間中ですよね。 ペナルティ・ボックス行き。 決定ですね。 (上)「ちょッ!? ちょっと待てッ!!! 待って下さいッ!! 後ちょっとだけでイイからッ!!! お願いだからぁッ!?」 それは無理です。 勉強時間中にイチャついたアナタが悪い。 15分間、反省しなさい。 そう言わんばかりの容赦ない行為に、上条はいつもの口癖を叫ぶしかなく…… (上)「ふッ、不幸だぁああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……ッ」 と、美琴を置いて再びペナルティ・ボックスに吸い込まれていきました。 (琴)「……あ……」 美琴はただただ、その様子を呆然と見ているしかないようで……。 あれ? 何か様子が変ですけど……? (琴)(待って欲しいって……何を待つの? もしかして……、もしかして……でも、もしそうだったら……、どうしよッ!? どうしようッ!?) (琴)「ふ、ふ……ふにゃああぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~……」 『バチバチバチバチバチバチバチバチッ!!!!!!!』 何を想像したのかは知りませんが、上条の『待って欲しい』の一言に過剰反応した美琴は、ふにゃー化して漏電してしまいました。 部屋は、いざという時のために耐電仕様になっていたので、黒焦げにはならずに済みましたが……。 運が悪い事にと言いますか、いつものパターンと言いますか、当然の『不幸』と言いますか……。 何故か耐電仕様であるはずのペナルティ・ボックスの動作システムに漏電の影響が及んでしまい、上条はずっと閉じ込められ、エプロン装備の美琴とお手製の夕食をおあずけされ続けたのでした。 結局、そんなこんなのドタバタ騒ぎの所為で、上条が言った『待って欲しい』が何を意味するのかは有耶無耶になってしまいましたとさ。 ちゃんちゃん。 前ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある異世界の上琴事情
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/424.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/どこにでもあるハッピーエンド 目覚め いつもと変わらない景色。 右を見ても左を見ても、そして天井を見上げても、そこには上条当麻が普段から見慣れたとある病院の、とある一室があるだけだった。 大きな戦いで彼が大怪我を負って入院するたびに使用する場所。 特にここ数ヶ月はあまりにも頻繁に使用するので、上条にとっては馴染みになってしまっている病室だった。 どこも代わり映えはしない。 たった一つの違いを除いては。 それは、ベッドで眠る患者が上条ではなく御坂美琴で、ベッドの横で彼女を心配そうに見つめるのが美琴ではなく上条であるという点だった。 「どうしてこんなことになっちまったんだ」 上条はベッドで静かに眠る美琴を見ながら辛そうに顔を歪ませた。 事の起こりは一週間前にさかのぼる。 その日上条当麻は、ある目的を持って学園都市に侵入してきた敵と戦った。 上条には理解できない目的を持っている者だったが、とにかく彼と彼の大切な人たちの幸せをその敵が壊そうとしていたことだけは確かだった。 そしてこれはいつものように上条がたった一人で死にもの狂いで行う戦いのはずだった。 自分以外の誰も傷つかないために。 だがその戦いはいつもとほんの少し、いや大きく違っていた。 上条の側には学園都市第三位の能力者、超電磁砲、御坂美琴の姿があったからだ。 上条の本音からすれば美琴を妹達の件以降、二度と危険なことに巻き込みたくはなかった。 特に今回の敵は魔術側に属する敵、美琴のためにも本当は絶対に関わらせてはいけない敵だった。 逆に美琴からすれば上条の記憶喪失を知った以上、彼への恋心を自覚した以上、彼一人を危険な目に遭わせるわけにはいかなかった。 好きな人と一緒にいたい、その人の力になりたい、美琴は純粋にそう願った。 そんな彼女からすれば、半ば強引であろうとも上条の戦いに参戦するのは至極当然のことであった。 少しの口論の後、結局二人は互いが互いをかばい合うように敵に相対した。 激しい戦いの末、上条達は敵を追い払うことに成功した。 だが負けを悟った敵は立ち去る寸前、不意打ち気味に上条に対して最後の攻撃を放った。 虚を突かれた上条には絶対にかわせない攻撃だった。 もうダメだ、と上条が思った瞬間、激しい爆発音が響いた。 しかし上条は全く痛みを感じることはなかった。 不思議に思った上条が爆発のあった方を向くと、そこには超電磁砲を放つ姿勢のまま立ちつくす美琴の姿があった。 上条が美琴に近づくと傷だらけの彼女の体はグラリと傾きゆっくりと倒れはじめた。 慌てて美琴を抱き留めた上条だったが、彼女の顔に全く生気がないことに気づいた。 「ちょ、御坂、どうしたんだ?」 表情を険しくした上条は美琴の体を揺すったが、彼女が反応する様子は全く見られなかった。 「おい御坂、御坂、しっかりしろ。しっかりしろおい、返事しろよおい!」 だがどれだけ上条が声をかけても美琴が目を覚ますことはなかった。 「起きろよ御坂、起きろてくれよ。起きてくれよ御坂、御坂、み坂……みさか――!!」 一週間前の戦いを思い出しながら、上条は悔しそうに唇をかんだ。 「どうして、こんなことになってるんだろうな」 上条はこの一週間、何度となく繰り返した言葉を呟いた。 「俺は、お前に、二度と傷ついて欲しくなんて、なかった……のに」 しかし美琴からの返事はない。 彼女はただ静かにベッドの上で眠り続けるのみだった。 ベッドで眠る美琴、椅子に座りその様子を辛そうな表情でじっと見つめ続ける上条。 二人が病院に来てから一週間、毎日続いている光景だった。 美琴より怪我の程度が軽いとはいえ上条も入院患者だったため、病院のスタッフも入院当初は上条の行動を諫めようとした。 しかし美琴を純粋に心配する上条の態度にやがてどのスタッフも上条の行動に干渉しなくなった。 もっともこれには病院の常連であり、かつ異常なまでの回復力を持つ上条だからこそ許された行為ではある、という事情もあるのだが。 とにかく入院が始まってからの上条の生活は美琴を中心に回っていた。 朝、朝食が済むとそのまま上条は美琴の部屋を訪れた。 部屋に入った上条はベッド脇の椅子に腰掛けると、心配そうにただひたすらじっと美琴を見つめていた。 昼になってもずっと上条は美琴の側にいた。 そんな上条が部屋を出て行くのは美琴の友達が見舞いに来るときだけであった。 特に美琴のルームメイトである白井黒子は毎日必ず見舞いに来ていた。 彼女たちが美琴の部屋を訪れる時はじめて、上条は自室に戻るのだ。 そして美琴の友達が退室すると再び上条は美琴の部屋に。 就寝時間になるまでずっと上条は美琴を見つめ続けた。 ロマンス好きの病院スタッフに言わせると、「まるで眠り姫の目覚めを待つ王子様みたい」ということになるのだが、そう言われても否定できないほどのひたむきさで上条は待ち続けていた。 入院してから今まで、決して目覚めない美琴が目を覚ますのを。 そして今日もまた、そんな一日が終わろうとしていた。 夕方、医者による検査を終えた上条は自分の部屋に戻ることもなく美琴の部屋に入ると、まるでそこが自分の定位置だと言わんばかりに、自然な動作でベッド脇の椅子に腰掛けた。 「御坂、やっぱり目、覚めたりしてないよな……」 上条は美琴が目を覚ましていないことを確認すると小さくため息をついた。 「カエル医者は、お前はもう治ってる、いつ目を覚ましてもおかしくないって言ってたんだけどな。やっぱり、俺がお前の変わりになってれば……」 上条は思わず口をついて出た自分の言葉にはっと息をのむと、頭をぶんぶんと振った。 「違う違う違う、そうじゃない、そうじゃない! そうじゃないんだ、これじゃダメなんだ!」 上条は一度大きく深呼吸をしてから美琴をじっと見つめた。 「なあ御坂。俺、さっきカエル医者に怒鳴りつけられたんだ『君はこの一週間、ずっと彼女を見舞っているのにまだ気づかないのかい?』って。ほんと、情けない話だ。言われて初めて気づいた。お前を助けるために俺が傷ついたら、いや、誰かが傷ついたら、それだけで悲しむ人はいるんだって、そんな単純なことに俺は気づいてなかったんだ」 がばっと上条は頭を下げた。 「本当にごめん。カエル医者から聞いた。インデックスが来てたのは知ってたけど、俺が怪我して寝てる時ってお前はいっつも俺の見舞いに来てくれてたんだってな。心配かけてごめん、それから、ありがとう」 その瞬間、かたっと言う物音がしたが話に夢中になっていた上条はまったく気がついていなかった。 「んにしてもこういうことに全然気づかないって、本当俺って頭悪いよな。まあ、よくよく考えりゃ中学生のお前に勉強教えてもらうくらいだし、補習の常連だし、これじゃ高度な演算ができないレベル0なのも当然か。いや、こんなこと言って努力しないから吹寄から『私は不幸を理由に努力をしないあなたが嫌い』って言われるのか。ああもう、何言ってるんだ俺、今こんなこと関係ないだろ」 イライラしたように頭をかきながら、上条は話し続けた。 「段々自分でも何言ってるか訳わかんなくなってきた。くそう、もうなんでお前がこんな大怪我しなきゃいけないんだよ。だいたい華奢な体してるくせにあんな戦いに飛び込んできやがって。自分が戦闘訓練受けたわけでもない普通の女の子だってこと忘れてんのかよ――って違う! これも違う、こんなこと言いたいんじゃない! お前にお礼が言いたいんだよ、俺は!」 ここでいったん言葉を句切り、上条は自分にできる一番優しい表情を浮かべた 「助けに来てくれて、一緒に戦ってくれて、俺をかばってくれて、本当にありがとう。あの時、お前が来てくれて本当に嬉しかった」 美琴の顔にほんのり赤みが差した。 だがやはり上条が気づくことはなかった。 「そういやお前とこんな感じで話すのって初めてなのかな、いつもけんか腰だったから、お互い」 ここまで一気に思いを吐露した上条は目を閉じ、ゆっくりと息を吐いた。 息を吐きながら今日はやたらと冗長な自分に気づいた。 普段の自分なら言わないようなことまで言っていた。 理由はわかっていた、さっき自分と美琴の主治医である冥土帰しに注意をされて以降、やたらとテンションが上がっていたためだ。 でもそれは嫌な気分ではない、むしろ逆だった。 冥土帰しの言葉をきっかけに思い返しはじめた過去の戦いや過去の出来事。 それらを一つ一つ思い返すたびに、以前から感じていた胸の奥のむず痒さがぶり返してくるのだ。 そのむず痒さはいつ始まったのかはもうわからない。 一週間前、一ヶ月前、いや、御使堕しの事件の頃には既に始まっていたような気がする。 それは上条当麻の中にある不定形でむずむずとした気持ちの悪い感情。 だが今、上条にはハッキリと確信が持てていた。 今のむず痒さは嫌なモノではない、と。 あとはむず痒さが嫌なものでなくなった原因がわかり不定型なモノが形を持てれば、とても嬉しいことが起こる、そんな予感がしたのだ。 だからこそテンションはいやがうえにも上がり、普段言わないような言葉が口をついているのだった。 「正直記憶がない俺にはお前とどれくらいの付き合いなのかわからない、俺が覚えてるのって妹達の時からだからな。でも、それからでも結構いろいろあったよな。御達のこともそうだし、偽のデートもやったし、地下街で会ったこともあった。大覇星際の借り物競走に、そのあと一緒に写メ取って……そうか。そうか!」 原因がわかった。 思い出、美琴との思い出だ。 口にして、言葉にしてようやくわかった。 美琴との思い出が頭に浮かぶたびにむず痒さが激しくなり、嫌なものでなくなっていくのだ。 それと同時に上条はもう一つの事実にも気づいた。 「なんでこんなに調子狂ってばっかりなのかやっとわかった。お前が寝てるからだ。お前と全然話してないからなんだよ」 上条は毛布から出ていた美琴の手をやさしく包み込むように握った。 本当ならば眠り続けている美琴が動くわけもないのに、テンションが上がりすぎている上条がその異変に気づけるはずもなかった。 何しろ今の上条の心は今まで感じたことのない想いでいっぱいになり始めていたのだ。 胸のむず痒さが嫌なものでなくなり、更には胸の奥がほんのりと暖かくなってきていた。 もう少し、もう少し時間をかければ不定形も形を持てそうだった。 今までにない感情の中、上条は素直な気持ちで美琴に声をかけていた。 「お前って、もう俺の側にいて当たり前なんだ。ビリビリやって、大声でわめき合って、泣いて、怒って、笑って、お前とワイワイやって、やっと俺、日常に戻れるんだ。あんな化け物みたいな連中とめちゃくちゃな戦いやったあと、お前がいるから日常に戻れるんだよ。お前がいてくれないと、俺もう全然ダメなんだ、普通じゃいられない」 不意に、上条の目に涙が浮かびはじめた。 テンションが上がりすぎて、心が素直になりすぎて、感情の抑えが効かなくなっていたのだ。 美琴に元気になって欲しい、その想いで心があふれかえりそうだった。 「本当に、目、覚ましてくれ。お前に話したいこと、聞いてもらいたいこと、たくさんあるんだ。一緒にやってみたいことも。それから、あれももうちょっとでなんとかわかりそうなんだ。でも、お前がいないと、起きてないと、なんにもできないし、始まらない。だから、だから……。起きてくれよ、美琴。美琴、美琴、みことぉ……!」 美琴の手を握りしめながら涙で声を詰まらせた上条は、それ以上声を出すことができなかった。 「今起きたら、私の言うことなんでも聞いてくれる?」 「……ああ」 「なんでもって、一回じゃないわよ。二回でも三回でも、ううん、私の気が済むまで聞いてもらうわよ。覚悟できてる?」 「任せとけ、上条さんは男の子だ、男に二言はない」 「気が済むまでなんだから、何日でも何年でもなんだからね」 「ちょ、おま、さすがに何年は――ん?」 ここに来てようやく違和感を覚えた上条は声のした方を見た。 そこにあったのは、寝たままではあったが瞳を潤ませ、穏やかな笑みを浮かべて自分を見つめる美琴の姿だった。 美琴は上条に握られていない方の手で目尻をぬぐい、ぱちぱちと瞬きをした。 次の瞬間上条の目の前には、頬を赤く染め瞳を潤ませてはいたものの、いつもの、上条が会いたがった美琴の笑顔があった。 「まずは私のことはきちんと名前で呼びなさい、ビリビリ禁止、名字もダメ」 「え……えと、みさ……みこ――美琴!? お前、いつから起きてたんだ!?」 「今さっき。具体的には『御坂、やっぱり目、覚めたりしてないよな』のあたりから」 「それって一部始終! あれ? え、えと、えと――」 美琴から手を離した上条はしゃがみ込んでしばらくうんうんとうなると、申し訳なさそうに先ほどとは別の意味の涙目で美琴を見上げた。 「すいません御坂さん。上条さんは一体何を言っていたんでしょうか! 全く記憶にないんですが!」 「記憶喪失ネタはもういいわよ。それとも何? この眠ってた美少女中学生のあまりの可憐さに我を忘れて無意識であんなことやこんなこと言ってたの? あーあ、美しいって罪ね。それからもう一度言うわよ、私のことは名前で呼びなさい」 上条はさーっと顔を真っ青にした。 さっきはテンションが上がりすぎていて自分が何を言ったのかはまったく覚えていなかったが、美琴の様子からかなり恥ずかしい、まずいことを言ったのだけは間違いなかったからだ。 「あんなことやこんなことって? 本当に上条さんはさっき自分が何を口走ったのか、ほとんど覚えていないんです!」 「ふーん」 「で、ですから、なんでも言うことを聞くというのは」 「却下」 「即答ですか? 一刀両断ですか? ですからさっきから言ってる通り上条さんは」 「その控訴は棄却されました。上条当麻は御坂美琴の言うことをなんでも、いくらでも、私が満足するまで一生聞くという法案は満場一致で可決されました」 「横暴だ! て言うかさっきより項目増えてるだろう! さっきまで昏睡状態だったのに口だけはえらく元気だな、おい!」 「ずっと寝てたんだから体力ありあまってるに決まってるじゃない。さ、まずは私の質問にきっちり答えてもらいましょうか。アンタには聞きたいことがたくさんあるのよね。まずはアンタとインデックスって子の関係よね。それにさっき言ってた吹寄って人は誰? どうも女の人っぽいんだけど」 指折り数えながらジト目でこちらをにらみつける美琴だが、当の上条は先ほどの自分の発言内容を思い出そうと必死でそれどころではなかった。 「それにしても俺は一体何を口走ったんだ……ん?」 上条は目をごしごしとこすった。 「錯覚?」 「こら、無視しないでさっさと答えなさい! インデックスって何者? それから五和って子は? あと黒髪の巫女さんにやたら胸が大きくて露出狂の侍! ロリ教師に巨乳の眼鏡! まったく、アンタは一体何人の女を口説いてるのよ! それにどうして胸の大きな子が多いの!」 「まさか、な」 先ほど一瞬だけ上条に見えた物。 それは真っ赤な鎖とそれに結びつけられた真っ赤な首輪。 首輪は上条の首にがっちりとはめられ、鎖の端は美琴にしっかりと握られていた。 「錯覚か? 錯覚、いや幻想だ。幻想に違いない」 青ざめた顔でうんうんとうなずく上条だが、その間も美琴の話は続いていた。 「まあその辺はおいおい白状してもらうとして、他行きましょうか。じゃあねえ……こ、ここ今度の日曜、セブンスミストに行くわよ! ゲコ太のショーやってるの。あ、朝からゆ夕方まで都合五回、全部の講演見るからね!! 一日中付き合ってもらうわよ!!!」 「……結局言うこと聞くってのは決まりな訳ね。あー、ふこ――でもないのか、結構」 いつもの口癖を呟きかけた上条だったが、笑顔で日曜の予定を語る美琴の顔を見ているとそんな気はあっさりと霧散していった。 上条は右手をそっと胸に手を当てた。 「でもあれは、なんだったんだろう?」 上条の心に浮かんだ不定形のモノ、結局それは不定形のまま。 形になるまではまだもう少し時間がかかりそうだった。 「ちょっと、話聞いてるの? 日曜日はいつもの公園で朝九時に待ち合わせ、いいわね! 来週以降もきっちりスケジュールは空けてもらうわよ!」 ――こ、この大バカ! 人が寝てると思ってなんてこと口走ってるのよ! あんな恥ずかしい、頭ぐちゃぐちゃになること! しかも言うに事欠いて覚えてないですって!? もう、もう、もう!! ――覚えててなくても、いいよ、今回だけは許してあげる。だから、いつか起きてる私に、ちゃんと言ってくれる? それまでは、私が、覚えててあげるから。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/どこにでもあるハッピーエンド
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/528.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/side by side ― バレンタイン ― 2月12日、常盤台女子寮、夜 日本の女の子達にとってはほぼ間違いなく注目される日、バレンタインデーを2日後に控えここに住む女の子は皆浮き足立っていた。 チョコを意中の男に渡そうと目論む者、ただ友達に渡そうと考える者、何やら怪しい薬を取り寄せてチョコに紛らわせ薬を飲ませようと企む者、と各々心の内に秘めるこそ様々だがチョコを大切な人に渡すというと根本的な所は共通してしている。 そんな中、230万人の人口を誇る学園都市にも7人しかいない超能力者、超電磁砲の異名をとる御坂美琴もそのような事を考えていた。 結論を言うと、彼女には想い人がいる。 嘗て彼女を絶望の淵から救い出してくれた人。 嘗て彼女にかけがえのない約束をしてくれた人。 その人、上条当麻である。 彼らの出逢いは6月、複数の不良に絡まれた時だった。 彼女は内心、バカな奴だと思っていた。 自分にそんな上っ面だけの偽善なんていらない、そんなものならない方がいい。 事実、彼が首を突っ込まなくても解決していただろう。 最終的に不良を追っ払ったのは彼女なのだから。 だが、その少年はあらゆる点で他の人と異なっていた。 まず第一に超能力者たる御坂美琴の電撃を浴びて無傷でその場をしのぎきった事。 彼が見せた正義は上っ面なだけのそれではなく、例えなにがおきても揺るぎない信念に基づいての行動であった事。 何よりも、自分が超能力者であることを知っても怖じ気づかず、妙に腰を低くしたりもせず、普通に他の人と同じように接してくれる事。 さらにその他様々な要因が重なり合い、極めつけは妹達の事件と偽デートでの約束。 今まで恋愛とはほぼ対局の場所に位置していた彼女でも、心底彼に惹かれるのは最早必然。 なので今まで大覇星祭、一端覧祭そしてクリスマスと数回にわたるアタックを重ねていたが、上条が鈍感であることと彼女が素直になりきれず、まだ想いは実っていなかった。 (バレンタイン…この日は、この日こそは自分に素直になって…アイツにこ、告白するのよ!) そう意気込んでいる美琴はまず手始めに上条の予定を聞くことにしたのだが、 (うぅ…やっぱり電話は緊張する…) やはり自分のほうから電話する事はまだまだ慣れていないこともあってか、実行にまだ移せないでいた。 今までは公園や帰り道などで会い、半ば強引に約束にこじつけていたが、今は夜で明日はチョコの準備やらで忙しくのん気に街をブラブラできない。 よって上条の体質上、当日には何が起こるかわからないため、14日の予定を確保するのは丁度同室の後輩の白井黒子が風呂に入っている今しかない。 …と美琴は頭ではわかってはいるのだが、今までの電話ではある意味まともに電話をしてまともな内容の会話をしてまともな終わり方をしたことがないので、自分が焦ったりや怒ったりで会話がちゃんと出来るかが不安だった。 (ええい、きっと成るように成るわよ!) ようやく決心のついた美琴は携帯のアドレス帳から、上条当麻を選択し通話ボタンを寸前で若干ためらったが、それでもなんとか押した。 トゥルル…トゥルル… コール音が1回鳴る毎に彼女心臓の鼓動が激しくなる。 (あぁもう早くでてよ!これじゃこっちがもたないじゃない!…にしてもなんて話を切り出せばいいんだろ…なんか急に話し出すのも…) このほんの少ししかない待ち時間にもかかわらず、理不尽になんの罪のない彼にあたってしまう。 そんな少しのことに対して怒ってしまう自分が嫌で仕方ない。 「ガチャ…おーっす、何か用か?」 「$\% !!??」 美琴はよくよく考えてみれば話の内容は決まりきっていたものの、それをどうやって聞き出すのかを考えてなかった。 なのでコールしている間にまとめようとするが、動揺している頭で迅速な処理が出来るはずもなく、突然の声に驚きの余り声にならない叫びを上げる。 「うわっ!!……ってなんだいきなり!」 「あ、ああアンタが急に声だすからでしょ!?」 「電話掛けてきたのお前だろ!!……はぁ、不幸だ…」 理不尽なのはわかっていた。 それは単なる八つ当たりな事もわかっていた。 しかし、美琴は極度の緊張状態に陥っていたため、まともな思考回路はどこかへ飛んでいってしまっていた。 (あぁもうだからそうじゃなくて!なんでこう上手くいかないのよ!) どうしてこうも素直になれないのか。 どうしてこうも簡単に理不尽なことをしてしまうのか。 美琴は自分の本心とは真逆の発言に苛立ちを覚えずにいられなかった。 「……んで?何か用があって電話かけてきたんじゃないのか?」 上条の声を聞き、幾らか正気が戻ってきた。 しかも、こちらから変に話を切り出すまでもなく向こうから話を持ち出してきてくれた。 このチャンスを見逃す手はない。 「ぁ…えと、その……」 「……まさか怒鳴るためだけにかけてきた、なんてことはないだろうな…?」 まずい、と美琴は思った。 いつもならば彼女はここで怒って、話が逸れ、挙げ句の果てには本題の話をできずに電話を切ってしまうだろう。 しかし、今日この時だけは事情が違った。 目的の日に、彼女の中に秘める想いを確実に告げることができるかできないかの瀬戸際なのだから。 恥ずかしい気持ちはあった。 苛立ちもあった。 だが今回だけはそれらを抑え、唯一の目標を果たすために口を開く。 「あ、あのね…今週末の日曜日、14日なんだけど……そ、その日空いてる?」 喋る内に少しずつ声量は小さくなっていたかもしれない。 でも電話越しの彼には確実に聞こえたはずだ。 美琴はなんとか勇気振り絞り、とりあえず1つの難関を突破できた事に安堵する。 「ん?14日なら午前中は補習だけど、その後なら空いてるぞ」 「本当に!?じゃ、じゃあその日の夕方いい、かな…?」 「ああ、いいぞ」 「よかった…んじゃ待ち合わせとか詳しい事はまた明日の夜にでもメールするから…じゃあね!!」 美琴は最後は約束を取り付けた事への安心から、気恥ずかしさが先行して早々に電話を切る。 (や、やった!約束できた!にしても疲れた…やっぱりこういうのは勇気がいるわね…) できたらこんな疲れる電話はもうしたくない、と一人呟きながらそのままベッドに横になる。 約束については嬉しい反面、ずっと緊張していたため終わった後の疲労感はすごい。 そのせいか、美琴は悶々として眠れていなかった最近とは対照的に、嬉しさと疲れが相まってすぐに眠りに落ちる。 背後からおぞましい怨念放つ者の存在に気づかずに… (お、お、お姉様が誰かと14日に約束を…キィィーーー!!) 怨念の根源、白井黒子は実は美琴が電話を掛け始めるほんの少し前に戻っていた。 彼女は美琴にも声はかけたのだが、何やらぶつぶつと呟きながら考え事をしていた美琴は全く気づいていなかった。 なので黒子は会話を一部始終を聞いていたのだ。 (まぁ照れていたお姉様を見れた事は良しとしましょう…ですが!お姉様があそこまでテンパる相手は恐らく、いや、あの類人猿しかいない!!…あんの類人猿めがぁぁぁぁあああ!!こうなったら明日にでも血祭りにあげててさしあげますわ!!) そんな上条への恨みを晴らそうと固く決意する黒子を背後に美琴はぐっすり眠っていた。 同日、上条宅 「何だったんだ?あいつ…」 上条は美琴との電話を終え、通信の途絶えた携帯を片手に疑問に思う。 何やら怒ったと思えば、次は黙る。 黙ったと思えば、14日予定を聞いてきた。 彼は美琴を色々とつくづく忙しい奴だなとも思う。 (にしても14日って…勿論『あの日』だよな?なんでまた俺…?) しかし、彼が一番疑問に思ったのはそれらではなく、女の子にとっては1年でかなり重要な日のバレンタインに自分を誘ってきた事である。 無論、それが嫌という訳ではない。 むしろ逆だった。 上条は美琴の事を好き、まではいかずとも気にはなっていた。 美琴は整った容姿とスタイルをもち、世界でもトップクラスのお嬢様学校の名門常盤台の学生、そして誰とでも分け隔てなく接することができて様々な人に慕われている。 そんな彼女を気にするなというのが難しいだろう。 さらに美琴は上条の記憶喪失についてカエル顔の医者を除けば、唯一知っている人間だ。 つまり上条は彼女に対して変に取り繕う事はしなくてもよい。 上条もそれらがわかっているからこそ気にはなっているのだが、彼の中でひっかかるところがあり、好きとまではまだいっていない。 それは彼女が名門のお嬢様学校とはいえまだ中学生であることと、そして何よりも自分の不幸体質にあった。 前者は世間体を気にせず、なおかつ自分がしっかり理性を保てば済む話だ。 だが後者はそうはいかない。 上条は自分が不幸なために人を好きになれば、他人にもそれが起きてしまうのではないかという事を恐れていた。 例がないので実際にあるのかはわからないし、他人に不幸が起きた事は今自分がもつ記憶の上ではない。 それでも上条は怖かった。 自分のせいで他人が不幸になること、幸せになれないこと、これらは彼にとっては一番許せないことである。 なので彼には人を気になることはあっても、好きになることには抵抗を感じていた。 そういうこともあり、一応恋愛には人並み程度に憧れてはいても、自分には縁のないものだと決めつけ、他人の心に気づかないというところに繋がっているのたが。 (……まぁいずれにしても、14日になればわかるか) 今いくら考えてもあくまでも推測でしかないからな、と上条は考えること一旦やめ、手に持っていた携帯をしまい、眠りについた。 2月13日土曜日AM6時、常盤台女子寮 御坂美琴のこの日の目覚めは早かった。 理由は言うまでもなく昨晩の出来事。 (私…ついにやったんだな…) 美琴は不意に携帯へ目を向けると思わず口元が綻んだ。 上条の予定を確保した今、もう彼女に迷いはない。 14日に上条にチョコを渡し、告白すると決心したからだ。 後は今日中にチョコを作ればそのための全て条件が揃う。 今日は忙しくなりそうだと意気込む美琴は起き上がり、顔を洗うために洗面所へ向かった。 途中、相部屋の白井黒子が「類人猿め…あの若造めが…」などとぶつぶつ言いながら何やら考え事をしている姿が彼女の視界の片隅に入ったが、今日つくるチョコの事と明日の事で頭がいっぱいなのでそんなことは勿論気にしなかった。 同日午前、とあるスーパー 意気揚々と材料調達に向かった美琴であったが、一つ問題があった。 (私、そういえばアイツの好み知らない…) 彼女今の今までただ漠然と『チョコをつくる』ことしか考えておらず、具体的にどんなチョコにするか、どの程度の甘さにするかなどを全く考えていなかったのだ。 さらに、それの指針となる上条の好みを彼女は知らない。 別に気持ちさえ伝わればいいか、とも思うがせっかくチョコを作ってあげるのだから喜んでもらいたい。 それらの思考が絡みあった結果、材料の調達もできず売り場の前で美琴は立ち尽くす事しかできなかった。 「あれ?御坂さんこんな所でどうしたんですか?」 美琴は突然声をかけられた方へ向く するとそこには頭に満開の花を乗せた初春飾利とその友達の佐天涙子が立っていた。 彼女達もまた明日がバレンタインということで、チョコを買いにここに足を運んだのである。 「え?あ、いや、ほら…その…」 突然声をかけられ、美琴は動揺する。 今のご時世、友チョコという言葉も存在するため、特に隠す必要もないのだが、やはり彼女にとっては何故だか恥ずかしさもありすぐに口を開くことはできなかった。 「もしかして、御坂さんもチョコですか?」 「ああ…うん、まあそんなとこかな」 なにやらはっきりしない美琴の発言に声をかけた初春は首を傾げる。 そこで隣にいる佐天が何かをひらめいたようにすると、急にニヤニヤとした顔で、 「あれぇ御坂さん、もしかして…明日手作りの『アレ』を好きな人に渡しちゃったりします?」 「ッ!!」 美琴はいきなり核心を突かれ、肩をビクンと大きくゆらし、一瞬で顔を真っ赤にそめる。 その反応を見た佐天はニヤニヤとした表情を崩さず、じっと美琴を見つめ、それは初春にも伝染していった。 (ビンゴ!?まさかのビンゴ!?) (この反応は…そ、そうなんですね御坂さん!) 普段は凛とした立ち振る舞い、はきはきとしてどこか男勝りな一面さえあるあの美琴が、恋する乙女のテンプレのような反応をみせた。 さらに彼女のこのような反応は二人は見たことがない。 したがって、まず間違いなく自分たちが言っていることは合っていると二人は確信する。 「ち、ちち違うわよ!大体、私には好きな人なんていないんだから!!」 「御坂さん、別に隠さなくてもいいんですよ?女の子なら誰でも通る道じゃないですか」 「ああもう!違うったら違うの!!」 美琴は2人に見つめられ慌てて取り繕うとしたが、波に乗った佐天はいくら否定されても止まらない。 なんだかんだ言っても彼女たちは年頃の中学生には変わりはない。 恋というものには当然ながら興味はあるし、それもあこがれの先輩の恋話となれば結果はどうなるかなど目に見えてくる。 「御坂さん好きな人ですか~。一体どんな人なんでしょうか…」 「ッ!!違うって言ってるのに…うぅ…」 そこに追い討ちをかけるような初春の一言。 否定しても2人は勝手に話を進めていき、美琴は涙目にしてバレる事を半ば諦め次第におとなしくなり、物を言わなくなった。 美琴としてもこれは初めての恋。 羞恥もさることながら、友達が相手であっても、どう話してよいものかはわからない。 「何か困ってる事でもあったら相談のりますよ?困っているように見えましたので」 そこに佐天が美琴に助け舟を渡す。 美琴は確かに困っていた。 しかし、彼女がそれを話すことは好きな人がいると話すということと同義で、この2人にはもう一生頭が上がらなくなると気がした。 それでも美琴は上条には喜んでもらいたい。 中途半端にやるよりは恥を忍んでで聞いてもらった方が、いい結果になるはず。 冷静に考えて1人で悩んでダメだったことから、今この差し伸べられた手を掴み相談にのってもらうことが最善と考えた。 「……誰にも言わないでね」 「え?あ、勿論ですよ!」 美琴念のために釘を刺しておく。 それに対し2人は初め本当にのってくるとは思っていなかったようで、一瞬驚きの表情を隠せなかったが、美琴の力になれるならとその後は胸をドンと叩き胸を張って答える。 (はぁ、後輩に頼ってて大丈夫なのかな私…) 普段は頼らない後輩に頼ってしまう自分に多少の不安と苛立ちを覚えるが、どれも彼が喜んでくれる事を考えれば少し楽になる。 そこでとりあえず彼女はどういう理由で悩んでいたのかを説明し、現状の打開策を考えることにした。 「-----という訳なのよ…私どうすればいいかな?」 「んー、ちょっと待ってくださいね…まだまさか御坂さんに本当に好きな人がいたことに対する驚きで頭が…」 こいつらは…と美琴は内心舌打ちする。 カマをかけてきたのはむこうなのだ。 無責任にもほどある。 「それじゃあ、その人はどんな感じの人なんですか?」 「へ?…言わなきゃ、ダメ?」 「それがわからないとアドバイスのしようがありません」 それもそうかと美琴は頷く。 どんな人かも分からないのでは話にならないのだが、やはり抵抗がある。 だが、そもそも1人で無理だったのだから相談にのってもらってるわけで、美琴には拒否権はない。 それがわかっていても恥ずかしいものは恥ずかしい。 悩みながらもようやく観念した美琴は顔を真っ赤に染めながら答える。 「えっと、そいつは年上で、バカで鈍感でムカつくけど、何かあった時は優しくて、私を救ってくれたり、守ってやるって約束してくれたりして…か、かっこよかったり…ゴニョゴニョ」 「おぉ!つまり、御坂さんのヒーローなんですね!?」 「ひ、ヒーロー!?そんな、あああアイツはそんな柄じゃ…」 ヒーローという言葉に過剰に反応する美琴に対し、なおもニヤニヤしながら美琴を見つめる2人。 だが、そのニヤニヤは先程までの好奇のものから羨望のものへと変貌していた。 (御坂さん、かわいいです!) (くー!いいないいな!私もそういう人欲しい!) 「あぁもう!そういうのはいいから、結局私はどうすればいいのよ!」 美琴はその空気に耐えられなくなり、周りの目も気にせず叫んだ。 美琴が顔を真っ赤にして若干涙目になっているを見て流石にこれ以上はと思った2人は追撃を止めることにする。 とはいえどんな人物かも全体を把握できずに、断片的な情報だけでは助言をしようにもたかがしれている。 彼女達も美琴同様大いに悩んだ。 「やっぱり…無理かな?」 美琴はその二人の様子を見て、申し訳なさそうに問いかける。 しかし、佐天と初春は美琴の力になりたかった。 普段そこまで自分のことを話さない美琴からこれだけの情報を受け取ったからということもある。 だがそれだけじゃなく、先輩で常盤台中学に通うお嬢様の美琴をなんとしても応援したかった。 しかも相手が美琴の初恋の相手だと言うなら尚更だ。 「んー、正直その人がどんなチョコをあげれば喜ぶかというのはわからないんですが、あたしが男なら手作り、それも御坂さんが頑張って作ったチョコを貰えればそれだけで十分嬉しいですけど」 「そうですよ。それに御坂さんの話を聞く限り、その人は人の気持ちを無下にするような人じゃないと思いますよ?」 「そう…かな?」 「少なくとも私はそう思いますよ。大事なのは気持ちですよ」 ねー♪と2人は向かい合って仲良く声を揃えてはしゃぐ。 (気持ち…そうよね、アイツなら私が気持ちを込めて作ったチョコを無下にはしないわよね) 依然としてはしゃいでる2人を横目に美琴は今まで心の中でもやもやとしていたものを断ち切る。 美琴は後輩にも頼ってしまったし、あまり知られたくないことも多々知られしまったが… (1人でダメだと思ったら他の人を頼ればいい…か、やっぱりこういうことも大事なんでしょうね) 以前妹達の件で鉄橋で言われた言葉を思い出しながら、その大切さを学んだ。 1人で悩むのは確かに辛い。 対して悩んでいる話題を他の誰かと共有することは楽だし、何よりも1人ではどうしようもない事も解決できる。 あの妹達の件がそうであったように。 美琴の性格上他人に頼りきるということはしないであろうが、それでも少しずつ他人を頼ることも覚えていこうと思えた。 「んじゃ初春さんと佐天さんはこの後どうするの?私は買い物するけど」 するべきことがみえたら早く行動に移したかった。 今心の中から溢れ出る強い気持ちが冷めない内に。 「私達もお手伝いします!と言いたいところですけど、こればっかりは御坂さんが頑張らないと意味ないですよね」 「あたし達のことは気にせず、チョコ作り頑張って下さい!明日、陰ながら応援してますよ!」 「そっか…それじゃ相談のってくれてありがと、またね」 「いえいえ、そんな礼言われる程のことしてませんって」 「お土産話期待してますよ!」 そういいながら、最後の最後で目の輝きを取り戻した2人と美琴は別れた。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/side by side
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2372.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/クリスマス狂想曲 12月23日 ――――――――― 佐天「ひゅふっ!?」/// 美琴「なっ!?な!?何を言っちゃってるのアンタ!!」カァッ 上条「また呼び方戻ってるぞ。美琴」 美琴「う、あ、と、当麻」/// 佐天「ど、ど、ど、どうしよう初春。ラブラブカップルが目の前にいる!!」 予想外の展開に慌てている少女を見て、頭に花飾りをつけた少女はすばやくその腕を掴む。 初春「じゃ、じゃあ御坂さん!私たちこれで失礼しますっ!お邪魔しました!!」 美琴「え?あ、うん」 佐天「え?初春?なに言って…てか危ないから引っ張らないで!!ねえ、うーいーはーるー…」ジタバタ 美琴「行っちゃった」(ちゃんと紹介したかったんだけどな) 上条「いやーテンション高かったなー」 美琴「あはは。佐天さん、スイッチ入っちゃうと止まらないから」 上条「まあでも、あの子のおかげで、また名前で呼んでもらえたからよしとするか」 美琴「あ、そういえば…さ」/// 上条「ん?」 美琴「さっき『相思相愛』って…」/// 上条「ま、まーな。ま、間違ってないだろ?」/// 美琴「…うん」/// なんとも形容し難い空気が二人を包み込む。それはそれで心地いいのだが、先に雰囲気に負けたのは少年の方だった。 上条「…あー、指輪ってあっちの方か?」 美琴「うん。いこっか」 上条「ああ」 ――ショーケースを覗きながらコイツ―当麻―と手を繋いで歩く。たったそれだけのことなのに、凄く楽しくて、嬉しい。 昨日までのわたしだったら、手を繋いだまま佐天さんや初春さんに声をかけようなんて夢にも思わなかっただろう。 でも、今はコイツと一緒にいるのを隠そうとは思わない。 上条「んー。結構ゴツイのが多いな」 美琴「基本的にファッションリングだからね」 上条「俺は普段着けていても邪魔にならないようなシンプルなのがいいと思っているんですけど」 美琴「え?ずっと着けているつもりなの?」 上条「ペアリングってそういうものじゃないの?」 美琴「ゴメン、常盤台ってそういうの厳しいから、普段着けるのは難しいと思う」 上条「…なあ、その、正当な理由があれば着けることは可能か?」 美琴「指輪を着ける正当な理由なんて…」 どくん。と胸が高鳴った。 上条「…婚約指輪とか」/// 美琴「ア、アンタ、なに言ってるの!?」カァッ 上条「さっき言っただろ?独占欲強いって」 美琴「…まあ、正式なものならいいかもしれないけど、中学生でそんなものしてる子いないわよ」/// 上条「そうか。…じゃあ、ペアネックレスとかにする?ネックレスなら隠れるだろ?」 美琴「…やだ」 上条「へ?」 美琴「ペアなら指輪がいい」 上条「でも、いつも着けてられないんだろ?」 美琴「…当麻とお揃いなら指輪がいい」 言いながら、わたしも彼に負けず劣らず独占欲が強いことを自覚した。 同時に携帯を取り出して、ある番号に電話をかける。 美琴「わたしも独占欲強いからね。…覚悟して」 上条「へ?」 コール音が途切れ、相手が電話に出る。わたしは大きく息を吸って話し始めた。 美琴「あ、ママ。ちょっといい?」 上条(なぜ美鈴さん!?) 美鈴『いきなりなーに?美琴ちゃん。ママ、昨日飲みすぎちゃって眠いんだけど』フアー 美琴「典型的な馬鹿大学生ね。…まあいいわ。あのさ、大覇星祭のときに会った人、覚えてる?」 美鈴『美琴ちゃんがいじめる。っていうか、大覇星祭のときに会った人って白い修道服の女の子かなー?』 美琴「違う、男の方」 美鈴『あー、詩菜さんの旦那様』 美琴「わざとか?わざとね!わざとなのねこのヤロー!!」 美鈴『うふふ。美琴ちゃんってからかいがいがあるから。で、上条当麻君がどうしたの?』 少女は少年に視線を向ける。 ――さあ、覚悟しなさい。 美琴「彼に、プロポーズされた」 上条「んなっ!?」/// 美鈴『え?美琴ちゃん?今なんて?』 美琴「だーかーらー、プロポーズされたの。それで、ママの了解を貰おうと思って」 美鈴『りょ、了解って?どういうことなの?』 美琴「婚約したい。――当麻と」/// 美鈴『うっわー。ママの予想をはるかに超えていたわー。やるわね、美琴ちゃん。ママ、すっかり目が覚めちゃった♪』 美琴「茶化さないで!真剣なんだから」 美鈴『…上条君はそこにいるの?』 美琴「うん」 美鈴『代わりなさい』 美琴「…代わってって」ケイタイ サシダス 上条「わかった。…代わりました上条です」 美鈴『いやーん!!上条君!美琴ちゃんになにしたの?ナニしちゃったの?奪っちゃったの!?』 上条「まだ何もしてねええええ!!いきなりなんなんですか!そのノリは!?」 美琴「!」ビクッ 美鈴『やだなあ、婚約したいなんて美琴ちゃんが言ってるから、全部済ませちゃったのかなーって。で、で、…避妊はちゃんとしたの?』 上条「まだ何もしてませんってば!!」 美鈴『それなのに婚約って、気が早すぎない?もし相性悪かったらどうするのよ』 上条「あ、いや、その。なんて言いましょうか、その、そういうのって美琴さんとしか考えられないので、約束手形が欲しいといいますかなんといいましょうか…」 美琴(わたしとしか考えられないってなに言ってるのよ)/// 美鈴『うーん。弱いわね。一時の気の迷いじゃないの』 上条「それはないです。俺は、…美琴を俺のすべてをかけて守りたい。…決して一時の気の迷いなんかではないです」 美琴「…」/// 美鈴『美琴ちゃんを、愛してる?』 上条「…はい」/// 美鈴『じゃあ、美琴ちゃんにわかるように言葉にして』 上条「…上条当麻は、御坂美琴を、愛しています」/// 美琴「ふぇっ!!」(あ、あ、あ、あい、あい、あい、あい…)/// 美鈴『…また清清しいまでに言い切ったわね。上条君。美鈴さんの負けだわ。…美琴ちゃんをよろしく。代わってくれる?』 上条「…」ケイタイ サシダス 美琴「あい、あい、あい…」ニヘラー 上条「美琴!電話」/// 美琴「ひゃいっ!?も、もしもし」/// 美鈴『美琴ちゃんはどうなの?上条君を、愛してる?』 美琴「…うん」/// 美鈴『じゃあ、上条君にわかるように言ってみなさい』 美琴「御坂美琴は、上条当麻を、世界中の誰よりも、一番愛してる!!」/// 上条「!!」/// 美鈴『見事に言い切ったわねー。美琴ちゃん。いいわ。認めてあげる』 美琴「ありがとう、ママ」 美鈴『いきなり婚約なんて言って、いかにもどこかの店内から電話してくるってことは、指輪でも買ってもらうのかしら?若いっていいわねー』 美琴「へ?なんでわかったの?」 美鈴『落ち着いた音楽と喧騒が聞こえてくるし、学校で指輪をつけていても咎められない理由が欲しいんでしょ?』 美琴「う、うん」/// 美鈴『じゃ、学校には連絡しておくわ。美鈴さん公認の許婚ができたってね』 美琴「…」/// 美鈴『とりあえず、結婚できる歳まではエッチしちゃ駄目よー』 美琴「なっ!なに言ってるのよ!!」/// 美鈴『まあ、若いふたりは耐えるのは難しいかもしれないわね。じゃあ避妊だけはしっかりすること!ゴムよりも学園都市製経口避妊薬の方が確実よ』 美琴「アンタ中学生の娘になに吹き込んどるんじゃあああ!!」/// 美鈴『あはは。じゃあ、近いうちにみんなで会いましょうねー。バイバーイ』 通話を終えて携帯電話をポケットに入れる。それから辺りを見回して胸を撫で下ろした。 美琴「ママが電話で『人の喧騒が聞こえる』とか言うから焦っちゃったわ。悪目立ちしてなかったみたいね」 上条「あんまり人いなくて助かったな」 少女はもう一度辺りを見回してから、頭を少年の肩に預ける。 上条「み、美琴?」/// 美琴「嬉しかった。ちゃんとママに言ってくれて」 上条「俺も、嬉しかった」 美琴「…」ギュッ 上条「…」ギュッ 美琴(なんか、幸せ…) 上条「…なあ、あれなんて、どうだ?」 そう言って少年はシンプルなメタルリングを指差した。光の加減でうっすらと青みがかって見えるプレーンリング。 上条「あ、すみません。そこのペアリング、見せてもらってもいいですか?」 店員を呼び、ショーケース内の指輪を出してもらい、それぞれ左手の薬指に嵌めてみる。 上条「あ…」 美琴「うそ…」 その指輪は、まるであつらえたかのように、お互いの指にぴったりと納まった。 上条「ヤバイ、なんか運命的なものを感じる」 美琴「うん、凄い馴染んでる感じ」 上条「じゃあ、これください。あ、このまま着けてってもいいですか?」 店員「ええ、構いませんよ。タグの紐を切らせていただきますね」ニコッ 上条「ありがとうございます」 店員「いえいえ。彼女さんも…はい、これでいいですよ」ニコッ 美琴「あ、ありがとうございます」 店員「いえいえ。はい、じゃあ確かに頂きます。ありがとうございました」 手を繋いで店を出る。少女は自分の左手を広げて指輪を眺めながら微笑を浮かべていた。 美琴「許婚、か」ニヘラー 上条「俺も親に電話しないといけないなあ」 美琴「…今、かけちゃう?」 上条「…そうだな。じゃ、階段のところまで行こうか」 美琴「うん」 ――引っ張ってくれる手に、さっきまでは無かった硬いものの感触があって、それが心地良かった。 階段のベンチに並んで腰を下ろすと、彼が携帯電話の通話ボタンを押した。 上条「もしもし」 詩菜『あら、当麻さん。珍しいわね?どうしたの?』 上条「いや、えーっと、なんといいましょうか…。母上様、驚かずに聞いていただきたいのですけれども」 詩菜『当麻さん…まさか女の子を孕ませてしまったとかじゃないでしょうね?』 上条「…アンタ自分の息子をどんな目で見てるんだコラ!」 詩菜『だって当麻さん、刀夜さんと同じでいつの間にか女の子と一緒にいることが多いんじゃないのかしら?うふふ』 上条「最後の笑い怖いよ!それにそんなことないですから!」 詩菜『自覚しないと、そのうち酷い目に会うわよ』 上条「だーかーらー、何でそういう話になってるんですか!?じゃなくって、俺は真面目な話があるんだ」 詩菜『なにかしら?』 上条「大覇星祭で会った人、覚えてる?」 詩菜『美鈴さん?』 上条「の娘さん。御坂美琴」 詩菜『ええ、覚えていますよ。彼女が何か?』 上条「事後承諾で悪いけど、…御坂美琴と婚約しました。美鈴さんには了解貰ってます」/// 詩菜『え?当麻さん、もう一回言ってもらえるかしら?』 上条「御坂美鈴さんの了解を頂いて、御坂美琴と婚約しました」/// 詩菜『…当麻さん。中学生を手篭めにしたの?』 上条「してねえよ!まだ指一本触れてねえよ!」/// 美琴「ふぇ!?」/// 詩菜『え?それで婚約って気が早くない?』 上条「なんで女親って揃いも揃って同じこと言うんだ。上条当麻は御坂美琴を愛してる!それが理由だ文句があるか!」 美琴(ま、また言ってくれた!)/// 詩菜『あらあら、若いっていいわねー。ところで、美琴さんは傍にいるの?』 上条「ああ」 詩菜『代わって』 上条「…代わってくれって」ケイタイ サシダス 美琴「か、代わりました。御坂美琴です」/// 詩菜『当麻さんとしちゃったの?』 美琴「ぶふぉっ!?いきなりなに言ってるのアンタ!!」/// 詩菜『お母さま公認で当麻さんと婚約っていうから、てっきりそういうことかなと思ったのだけど』 美琴「そういうことしなくっても、お互い愛してるんだから約束してもいいじゃないですか!」/// 上条「!!」/// 詩菜『ねえ、美琴さん。当麻さんはね、疫病神、不幸の使者と呼ばれていた子ですよ?…本当にそんな子と一緒にいたいのかしら?』 美琴「そんなの!!そんなの関係ない!!アイツは、当麻はわたしにとって、かけがえの無い人だもの!!いくら親でもそんな風に当麻のこと言うのは許せない!」 上条(美琴…)/// 詩菜『…ありがとう』 美琴「え?」 詩菜『当麻さんのために怒ってくれて。あの子のことお願いします』 美琴「あ、いえ、こちらこそお願いします」ペコリ 詩菜『あ、美琴さん。避妊だけはしっかりしなさいね。スキンよりも経口避妊薬の方が確実よ』 美琴「お、女親ってそれしか言えないのかあああ!!」/// 詩菜『うふふ。美琴さんだって、まだ母親にはなりたくないでしょう?』 美琴「そ、それはそうですけど…でも、当麻との…なら…」ゴニョゴニョ 詩菜『まあまあ。当麻さんも幸せ者ね。こんなに可愛い彼女が傍にいてくれて』 美琴「…」/// 詩菜『当麻さんと代わってくれる?』 美琴「あ、はい…」ケイタイ サシダス 上条「…変なこと吹き込まなかっただろうな?」 詩菜『当麻さんの悪口言ったら、怒ってくれたわよ。それだけで当麻さんの嫁として合格です』 上条「なっ!?」/// 詩菜『当麻さん。一度守ると決めたのなら、最後まで貫きなさい』 上条「…ああ。約束する」 詩菜『じゃあ、近いうちに美琴さんを連れて家にいらっしゃい。刀夜さんと一緒に嫁いじりして楽しむから』 上条「そんな危険なところには連れて行かない!」 詩菜『あらあら。可愛い嫁を連れてこないなんて親不孝者ね。当麻さん』 上条「だー!もー!!以上!連絡終わり!」 通話を終えて、少女を見る。少女が小さく微笑んでくれるだけで、少年にも自然と笑みがこぼれた。 美琴「どうしたの?」 上条「散々からかわれた。…けど認めてくれた」 美琴「そ、そっか」/// 上条「ああ。美琴は上条家の嫁ってお墨付きをいただきました」 美琴「よっ、よ、よ、よ、よ、よ、よめっ!?」カァッ 上条「ま、まあアレ、ほら、許婚だからな!」/// 美琴「そ、そ、そ、そうよね!!許婚だもんね!」/// 上条「ははははは」/// 美琴「うふふふふ」/// ――― 手を繋いでバス停へと向かう途中、少年の携帯電話が鳴った。右手で携帯電話を取り出して画面を見る。 上条「小萌先生か。なんだろ?ちょっとゴメン」 美琴「うん」 上条「もしもし…」 小萌『上条ちゃんはお馬鹿さんですから、シスターちゃんは今日、先生の家にお泊りなのですよー』 上条「インデックスを預かってくださるのは助かりますが、なんなんでしょうか?その棘のある一言目は!?」 小萌『明日のクリスマスパーティーは女の子限定ですから、上条ちゃんは来ちゃ駄目なのですよー』 上条「スルー!?そして上条さんにご馳走を食べる権利が無くなった!?」 小萌『上条ちゃん?大事な人がいるのに、クリスマスに先生に世話になろうなんて思っちゃいけないのですよー?』 上条「大事な人?え?え?」 小萌『御坂美琴さん、でしたか?上条ちゃんも隅に置けませんねー』 上条「う、え…」(な、なんで知ってるんだ!?) 小萌『今もデート中なのでしょう?』 上条「ま、まあ…」/// 小萌『ふふふ。壁に耳あり障子に目ありですよ。上条ちゃんと常盤台の子がデートしているって聞いたものですから』 上条「まいったな…」 小萌『ひとつだけ聞かせてください。上条ちゃんは、御坂さんを選んだのですね?』 上条「…いまいちなにを聞かれているのかがわからないのですが?」 小萌『上条ちゃんの周りにいる女の子の中で、一番大事な人は御坂さんということでいいのですよねー?』 上条「あ、えーっと…。はい」/// 小萌『じゃあクリスマスは御坂さんと仲良くするのですよー。あ、でも、学生としての節度は守るのですよー』 上条「なっ!?」/// 小萌『ではでは、良いクリスマスをー』 上条「ちょ、ちょっと!?小萌先生!?」 一方的に通話を切られ、少年は困惑して携帯を見る。 美琴「どうしたの?」 上条「ん?小萌先生がインデックスを今日泊めるってさ。それで、明日のパーティーは女性のみでやるから俺は来るなって。それで、クリスマスは美琴と過ごせってさ」 美琴「ア、アンタとわたしのこと、何でアンタの先生が知ってるのよ!?」/// 上条「あー、青ピから連絡行ったか、誰かに見られたのかもしれない」ウーム 美琴「何でアンタそんなに冷静なのよ?」 上条「ん?だって俺たち許婚だろ?親公認だし、別に隠す必要も無いかなって」 美琴「~っ!!」カァッ 上条「自分も独占欲強いとか言っておいて、何で照れてるんでしょうね美琴さんは」 美琴「うぅ。それはそうだけども…」(やっぱり恥ずかしい)/// 上条「ま、ゆっくり慣れてけばいいよな」ニコッ 美琴「…うん」 上条「さて、と。じゃあ今日の夕飯と明日の食事はどうするかなあ」 美琴「あ、そっか。あの子いないんだっけ」 上条「そうなんですよ。ま、今日は適当に作るとして、明日は…、明日もデートしようか」カァッ 美琴「デ、デート!?」/// 上条「今日みたいにショッピングでもいいし、どこか遊びに行くのでもいいし」 美琴「う、うん。…あ、あのさ?」 上条「ん?どこか行きたいところとかあるか?」 美琴「そうじゃなくって、その、さ。…今日の夕飯とか、明日のご飯とか、作ってあげようか?」 上条「…ホントに?」 美琴「うん」 上条「うわ。すっげえ嬉しい」 美琴「ふふ。じゃあ、スーパー寄っていこう。何か食べたいものとかある?」 上条「美琴センセーにお任せします」 美琴「じゃ、行こっか」ニコッ 少年に向かって微笑むと少女は手を引いて歩き出す。その顔はとても楽しそうであった。 ――― 寮監「御坂」 美琴「は、はい。なんでしょうか?」 スーパーで買い物をして、少年の家でカレーなどを作ってから門限ぎりぎりの時間に寮へ戻ると、寮監から声をかけられた。 寮監「ちょっと私の部屋へ来てくれ」 美琴「わかりました」(なんだろう?) 部屋に入り、促されるままダイニングテーブルの椅子に座る。部屋の主はティーカップとティーポットをテーブルの上に置き、少女の対面に座る。 寮監「飲むか?」 美琴「いただきます」 寮監「砂糖はいるか?」 美琴「いえ」 寮監「そうか」 寮監は優雅に紅茶を一口飲むと、音を立てずにソーサーにカップを置き、まっすぐに少女を見た。 寮監「まずは、おめでとう。と、言っておこう」 美琴「は?」 寮監「…婚約だ」 美琴「…は、はい」/// 寮監「お前を呼んだのはその件だ。常盤台は淑女を教育するための学校でもあるから、親公認で許婚ができることもまあ珍しくは無い。だが、正直に言うと、私にはお前に許婚というのは想定外だった」 美琴「…」 寮監「話が逸れたな。とりあえず、許婚がいる場合、門限や外泊に関しての規則が緩和されることになる。もっとも、届出は必要になるが。…まあ、お前の場合は研究協力なども多いから今までとあまり変わらないかもしれないが」 美琴「…」 寮監「あとは、その、親公認である場合は、薬剤が処方される。なるべくはやく薬局へ行って処方してもらってこい。これが処方箋だ」ペラ 美琴「はい。わかりました」(薬?) 処方箋に目を通した少女の顔が一瞬で紅に染まる。 美琴(こ、これ、これ、これって~~~!!)/// 薬剤の備考欄には『常盤台中学校 特措×-○における対象生徒 健康管理のための処方 エストロゲン調整剤 PI:0.1 要継続摂取』と記されていた。 授業で習っているため、エストロゲン調整剤の意味を少女は知っていた。エストロゲン調整剤、簡単に言えば経口避妊薬である。 寮監「まだ早いとは思うが、なにぶん相手もあることだし、学校としては不測の事態を避けるためにもあらかじめ処方することにしている」 美琴「あ、あはは~。わたしにはまだ早いと思いますけど」/// 寮監「服用は月経が終わってから、準備期間は一週間だ。それまで、性行為は慎むように」 美琴「せっ、せっ、せっ!!」アワアワ 寮監「お前がまだ早いと思っているのはわかるが、男というものは征服欲が強い。まして許婚ともなれば家単位で法律よりも慣習を優先させる傾向がある」 美琴「…」(ア、ア、ア、アイツと…)/// 寮監「御坂。私はな、寮監という立場上、そういった生徒を見てきた。だから、お前が傷つかないよう服薬をすることを勧めさせてもらう。傷つくのはいつも女の方だからな」 美琴「…」 寮監「私からは、常盤台の学生として、節度ある行動を心がけるよう行動してくれとしか言えない」 美琴「…はい」 寮監「次は装飾品についてだが、婚約指輪や慣習で引き継がれる貴金属は校則で禁止されているアクセサリー類からは除外される」 美琴「…」/// 婚約指輪という言葉に反応して、そっと左手に触れ、少女は頬を染める。その様子を見て、寮監は小さく首を傾げた。 寮監「…御坂は、許婚に対して恋愛感情を持っているのか?」 美琴「ふぇ!?」/// 寮監「いや、すまない。家の都合で婚約するものが多いから、お前みたいに嬉しそうにしているのは珍しいから…な」 美琴「あ、えっと、はい。…好きです」/// 寮監「相手もお前のことを好いていてくれるのか?」 美琴「は、はい」/// 寮監「…そうか。それは良かった」 美琴「…わたし、恵まれてるんですね。好きな相手と、婚約できて」 寮監「そうだな。だが、私は、婚約とは本来そういうものであって欲しいと願っている」 美琴「…」 寮監「だから、御坂。私はお前が相思相愛で婚約したということを、常盤台の寮監としてではなく、一人の知り合いとして祝福したい。おめでとう。御坂」 美琴「あ、ありがとうございます」/// 寮監「ところで、公表はするのか?」 美琴「友人以外には言わないと思います。まあ、すぐに広まるとは思いますけど」/// 寮監「そうだな。学校というものはそういう話に敏感だからな」 美琴「…彼にも言われたのですけど、親公認だから、その辺は開き直ってしまおうかと思いまして」/// 寮監「許婚はどんな奴だ?」 美琴「わたしよりも二つ年上で、お人よしで、おせっかいで、正義感が強くて、超能力者だろうがなんだろうが特別視しない人です」 寮監「高校生か。超能力者だろうがなんだろうが特別視しないということは、学園都市の生徒か?」 美琴「ええ、まあ」 寮監「…そういえば一時期、常盤台の超電磁砲が追い掛け回している無能力者がいるという噂があったな。お前の相手はその噂の相手なのか?」 美琴「うぇ!?」(う、噂になってたんだ)/// 寮監「幼馴染か何かか?」 美琴「あー、幼馴染ではないです。でも縁があるというかなんというか…」 寮監「見知った仲ではあるということか」 美琴「まあ、そうです」/// 寮監「…学園都市で知り合って、親公認の許婚か。…それは運命の相手と言えるのではないだろうか」/// どこか遠くを見るような眼差しで、寮監は言うと頬を紅く染めた。 美琴「…へ?」 寮監「幾多の困難を乗り越え、将来を誓い合うふたり。そこにあるのは真実の愛」ウットリ 美琴「りょ、寮監様?」 寮監「…羨ましい」ボソッ 美琴「あ、あはは」(あれ?寮監ってこんな人だった?)/// 寮監「…んっ、ゴホン。ともかく、おめでとう」/// 美琴「あ、ありがとうございます」(あ、戻った) 寮監「…報告はいつでも受け付けるからな」 美琴「ほ、報告なんてしません!!」(やっぱり戻ってない!!)/// 寮監「そうか。遠慮しないで良いのだぞ」ニコッ 美琴「し、失礼します」(寮監が壊れた…)バタン まるで年下の友人のように恋愛話を聞きたそうにしている寮監に恐れを抱いた少女は、すぐに立ち上がって部屋から出た。 美琴(寮監も乙女だってことかしら…)ブルブル 幸い寮監が追いかけてくることはなかったので、そのまま自室へと足を向ける。 美琴(そういえば黒子に文句言わないといけないわね。黒子のせいでアイツにパンツ見られちゃったし)/// 軽く頭を振って恥ずかしさを振り払うと、部屋の扉を開けた。 美琴「ただいま。黒子」 黒子「……………………」ブツブツ ルームメイトはベッドの上で体育座りをして、なにやら呟いていた。 黒子「お姉様が類人猿と間接キスをしていただなんて黒子は認めないですの。でもお姉様が類人猿の口に付いたクリームを指で掬ってペロッと舐めたのは事実。いえ、あれはきっと何かの間違いですの。黒子は疲れていた。お姉様は実験をしていた。でも、実験をしていたお姉様は類人猿の好みで短パン+ゲコ太パンツを履かずに縞パンを履いていた。つまり類人猿によって穢されていて、そんなこと、そんなこと黒子は、黒子は認めないですの」ブツブツ 美琴「アンタはなに呟いてるんじゃゴラアアアア」ビリビリ 黒子「ああ~んっ!!愛の鞭ですのぉぉぉぉぉぉ!!」ビクンビクン 美琴「てか、実験って何よ!アンタどんな妄想してるのよ!」 黒子「…ハッ、黒子はなにも見ていません!お姉様とは会っておりませんの!縞パンなんて見ておりませんの!」(実験のことは秘密でしたの!) 美琴(縞パンって、確か妹達が履いていたわよね…。妹達の一人が偶然、黒子に会って実験中とか言って誤魔化したのね、きっと)「そうよね。アンタは喫茶店でわたしの短パンずりおろしただけよねぇ…」ビリビリ 黒子「お、お姉様!?落ち着いてくださいませ。あれは、お姉様の貞操を確認したかっただけですの」 美琴「アンタねえ。デートの邪魔しておいて言いたいことはそれだけかしら?」 黒子「デ、デ、デート!?今、デートと仰いましたの!?」 美琴「ええ。アンタ、わたしのデートを邪魔したわよね」 黒子「あ、あ、あの類…殿方とお姉様がデート!?」 美琴「そうよ。わたし、当麻と付き合うことになったから」 黒子「な、な、名前呼び…」ブルブル 美琴「別に、彼氏のことを名前で呼んでもいいでしょ?」 黒子「お、お、お姉様が、お姉様が殿方のことを彼氏と…。黒子は、黒子は、少し外の風にあたってきますの…」フラフラ ツインテールの少女は虚ろな表情で立ち上がると、そのまま部屋から出て行った。 美琴(なんか思ってたよりも静かだったわね。もっと騒がれると思っていたんだけど) ベッドに仰向けになり、左手を上げて薬指を見る。 美琴(許婚、かあ)ニヘラー 幸せそうな微笑を浮かべて、少女はしばらくの間、指輪を眺めるのであった。 ――― ――お姉様が…殿方と恋仲に… 寮の屋上へと移動したツインテールの少女は、夜空を見上げながら溜息をついた。 ――わかっていたことですの。でも、お姉様から直接言われると、やはり堪えますわ。 夏頃からあのツンツン頭の少年を追い掛け回していたのは知っている。『電撃が効かないムカつく奴がいる』と、楽しそうに話していた。 秋が近づくにつれ、ツンツン頭の少年のことを話すたびに赤くなったり、挙動不審になったりすることが多くなった。 第三次世界大戦の後、しばらくの間ツンツン頭の少年のことを呼んで魘されていた。 ――なにがあったのかはわかりませんが、あの時のお姉様はそれはもう酷い有様でしたわ。今にも壊れてしまいそうなくらい打ちひしがれていて…。でも、いつの間にかお元気になられて、殿方のことを呼んで微笑んだりして…。 秋の初め頃、研究協力の一環として外泊することがあった。その頃には常盤台のエースの名に恥じない超能力者第三位に戻っていた。 ――なぜか私服を持っていかれたりしましたけど。もしかしたら学園都市の外の協力企業への出向だったのかもしれませんが。 黒子「…」ハァ ――あの殿方と一緒にいるときのお姉様を見てしまうと、黒子が入る隙は無いですの。 しばらくの間、空を見上げながら、ツインテールの少女は呟いた。 黒子「上条当麻…お姉様を泣かせたりしたら許しませんですわよ」 ――― とある男子学生寮の一室 ベッドの上の寝具を床に置いてあったものと取替えると、少年はその上に仰向けに倒れこんだ。左手を上に上げ、薬指の付け根をじっと眺める。 上条「許婚、か」 自然と、頬が緩む。 待ち合わせ場所で抱きつかれた時に、自分の中にあった想いを自覚した。 喫茶店で自分の想いを確信して、そのままの勢いで階段の踊り場で告白して、両想いだったことに幸福を感じた。 いつでも一緒のものを身に着けていたい我侭から、お互いの親に連絡をして許婚になった。 上条「…結構ぶっ飛んだことをしたよなあ」 後悔はしていない。むしろ絆が深まったことに幸せを感じている。 上条(それだけ俺は、美琴のことが好きだったんだな) 夕飯に作ってもらったカレーは、今まで食べたカレーの中で一番美味しかった。 寮の前まで送ろうと思ったのに、『抱きしめて欲しいから』と言われて、公園で抱きしめた後、姿が見えなくなるまでそこで見送った。 上条(しかし、何であんなにいい匂いがするんだろうな)/// 頬を赤くしながら、天井を見上げて両手を挙げる。 上条「幸せだー」 ――― 布団の中で、銀髪の少女は目を開けて天井を見た。 インデックス(とうまとみことがデートをしていた) 頬を赤く染めていた茶髪の少女の顔が思い浮かぶ。 茶髪の少女は、安全ピンで留めた修道服を『そんなの着ていると危ないから』と言って縫ってくれた。 『女の子は身嗜みも大切よ』と言って、ショッピングモールへ連れて行ってくれて、下着や部屋着、小物、生活用品を買ってくれた。 たまに部屋に来ては同居人のツンツン頭の少年に勉強を教えたり、わざわざ材料を持ってきて食事を作ってくれた。 ときどき外に連れていってくれて、一緒に遊んでくれた。 インデックス(最初はとうまを虐める酷い奴だと思っていたんだよ) 茶髪の少女は、外で会うと必ずと言っていいほど、ツンツン頭の少年に向かって雷撃をぶつけてきた。 でも、何度か見ているうちに、攻撃というよりは、話すためのきっかけを作るためにそうしているんだと気が付いた。 ツンツン頭の少年と話している時の茶髪の少女は、とても嬉しそうで、楽しそうだったから。 インデックス(やっと、とうまに想いが届いたんだね) 銀髪の少女の口元に優しい微笑が浮かぶ。そして再び目を閉じた。 インデックス(よかったね。みこと) ――― 学習机の椅子に座り、右手でシャープペンシルを弄りながら、黒髪の少女はノートに視線を落とす。 姫神(上条君。楽しそうだった) 常盤台中学の女の子と真っ赤になりながら、ケーキを食べさせあっていたツンツン頭のクラスメイトの少年。 青髪ピアスのクラスメイトの少年が乱入した時には『デートの邪魔をするな』と言って、しっかりと女の子をかばっていた。 姫神(デート…か。あれもデートになるのかな?) 青髪ピアスのクラスメイトの少年に頼まれて、一緒にクリスマスオーナメントを選んだ。そのお礼にと、クレープとココアを奢ってもらった。 姫神(私は。どうして。OKしたんだろう?) 青髪ピアスのクラスメイトの少年との約束。明日も彼のショッピングに付き合うことになっている。 姫神(別に。今日買ってもよかったと思うんだけど) 青髪ピアスの少年はどうしてわざわざ明日を指定してきたのだろう。 姫神(まあ。楽しかったから) 青髪ピアスの少年との他愛の無い話や、クリスマスオーナメント選びは思っていたよりも楽しかった。 姫神(青ピ君…か) 青髪ピアスの少年のことを思い出しながら、少女は小さく微笑んだ。 ――― 12月23日夜、とあるふたりのメール ――――――――― From 御坂美琴 Subject:今日は 本文:ありがとう。嬉しかった。夢じゃないよね?わたし、当麻の婚約者だよね? ――――――――― From 上条当麻 Subject Re 今日は 本文:夢だったらどうする?俺は泣く。 ――――――――― From 御坂美琴 Subject:Re Re 今日は 本文:泣くだけなの?わたしは死んじゃうかも… ――――――――― From 上条当麻 Subject 安心しろ 本文:御坂美琴は上条当麻の婚約者だ。冗談でも死ぬとか言うな。好きだぞ。 ――――――――― From 御坂美琴 Subject:わたしも 本文:よかった。ごめんなさい。大好き。 ――――――――― From 上条当麻 Subject:明日 本文:10時に自販機前で待ち合わせでいいか?ゲーセンでも行こうぜ。 ――――――――― From 御坂美琴 Subject:Re 明日 本文:了解。一緒にプリクラ撮りたいな。新作のゲコ太フレームのやつが出たんだ。 ――――――――― From 上条当麻 Subject:Re Re 明日 本文:ゲコ太に邪魔されないツーショットが欲しいかも。 ――――――――― From 御坂美琴 Subject:Re Re Re 明日 本文:うん。それも一緒に撮ろうね。 ――――――――― From 上条当麻 Subject:Re Re Re Re 明日 本文:ゲコ太は確定かよ。まあいいけど。 ――――――――― From 御坂美琴 Subject:ゲコ太 本文:イヤ? ――――――――― From 上条当麻 Subject:Re ゲコ太 本文:イヤじゃないぞ。好きなんだろ? ――――――――― From 御坂美琴 Subject:Re Re ゲコ太 本文:うん。でも、当麻の方が好きだからね。 ――――――――― From 上条当麻 Subject:Re Re Re ゲコ太 本文:サンキュー。俺も、好きだぞ。 ――――――――― From 御坂美琴 Subject:あのね 本文:言葉で、聞きたいな。 ――― 常盤台中学学生寮208号室 ベッドの上に横になり、茶色い短髪の少女は携帯電話を握り締めていた。 ルームメイトであるツインテールの少女は、勉強机の前に座ってノートパソコンを開き、キーボードに何かを打ち込んでいる。 他愛の無いメールのやり取り。それはそれで楽しかったのだが、文字だけでは物足りなくなってくる。 美琴(わがままだなあ。わたし)ハァ 小さく溜息をつくと同時に、握っていた携帯電話が震えて、少女は小さく体を震わせた。 ディスプレイに表示された、『上条当麻』の文字に頬が赤くなるのを自覚しながら、少女は通話ボタンを押す。口元に幸せそうな笑みを浮かべて。 美琴「も、もしもし」/// 上条『まったく、お前は甘えん坊だなあ』 美琴「わ、悪い!?」 上条『いーや、悪くないですよ美琴さん。…ホントのこと言うと、俺もお前の声、聞きたかったし』 美琴「ホ、ホント?」 上条『お前に嘘ついてどうするんだよ。あー、…好きだぞ。美琴』 美琴「わたしも、好き!」/// その言葉を聞いて、ツインテールの少女の身体が小さく震え、キーボードを打つ手が止まる。(彼女に聞こえているのはルームメイトの少女の声だけ) 黒子(まさかとは思いますが…殿方とのラブトークですの!?)ブルブル 上条『…上条さん、幸せを噛み締めてるんですけど』 美琴「ふふ。当麻♪す~き♪」 黒子「―――!!」(ギュオエエエエエエエエエッッ!!あの類人猿めえええええええっっ!!)ギリギリ 上条『あー、もー!なんでこう美琴さんは、今日一日でこんなに可愛くなっちゃったんですか!』 美琴「当麻が告白してくれたからに決まってるじゃない!わたしはずっと、当麻のことが好きだったんだから!だから、当麻が好きって言ってくれたから、わたしも素直になれたの」/// 黒子(告白ですとおおおおっ!?こ、これはまずいですの。この後は延々とお姉様の惚気話が続くかもしれなくて、そのようなもの、わたくしには耐えられませんの…)ガタガタブルブル 上条『上条さんは幸せ者です。こんな素敵な彼女がいて』 美琴「わ、わたしも幸せ!当麻の彼女になれて」/// 上条『美琴』 美琴「当麻」/// 黒子「…!!」(酸素、酸素が足りませんわ!お姉様が電気分解でオゾンでも精製させておりますの?)ゼエゼエ 上条『やべ。これ以上話していると会いたくてたまらなくなる』 美琴「ホントに?わたしも今、同じこと考えてた」 上条『はは。似たもの同士だな』 美琴「えへへ」 上条『じゃあ、また明日。おやすみ』 美琴「…もう一回、好きって言って?」 黒子「――!!」(げ、限界ですの…)パタリ 上条『美琴。好きだ』 美琴「わたしも、好き。おやすみ。当麻」 上条『おやすみ。美琴』 少女は携帯電話を閉じると、それをそっと胸に抱いた。 美琴(おやすみ。当麻) 黒子「…」 ――――――――― クリスマス狂想曲12月23日 了 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/クリスマス狂想曲
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2371.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/クリスマス狂想曲 12月23日 ――――――――― 喫茶店を出て、気が付くとアイツと手を繋いで歩いていた。 アイツの顔は、まるでさっき飲んだストロベリージュースのように赤くなっていて。 わたしの顔も、アイツと同じように赤くなっている、と思う。 美琴(…ってか、なんなのよ!?この状況!?)/// 理解不能。意味不明。 美琴(コイツはいったいどうしたいのよ!?)/// 喫茶店を出てからはずっと無言で、だけど、いつの間にか手を繋いでいて。 さっきから胸はバクバクしっぱなしだし、掴まれた右手はじっとりと汗ばんでしまっているように思えるし、それはそれで女の子として凄い恥ずかしいっていうかなんていうか…。 美琴「ね、ねえ?どうしたのよ?」 上条「…なんて言えばいいのか、考え中です」 美琴「なによそれ?」 上条「いろいろしちゃいましたから」カァッ 美琴「確かに、いろいろ、しちゃった…わね」カァッ 上条「正直、やりすぎた感じが否めないわけですが、…御坂のアレが一番ヤバかった」 美琴「よーし、今すぐ忘れろ忘れるのよ忘れなさい!!」ビリビリ 上条「ちょっと待って御坂さん!自分から舐めといてそれはあんまりじゃないでしょうか!?」 美琴「へ?」 上条「その、指で拭ってペロッって…」 美琴「ぎゃああああああああ!!なに言ってるのよアンタ!!」(てっきりパンツのことかと思ったじゃないの!)/// 上条「いや、でもなあ。アレは反則だぞ」 美琴「な、な、仲のいいお友達なら普通のことよ!」 上条「女の子同士ならいいかもしれないけど、上条さん男の子ですよ!?」 美琴「ア、ア、アンタならわたし、気にしないけど!?」(って、なに言っちゃってるの!?わたし)/// 上条「御坂…。お前俺のことそんな風に見てたのかよ」 美琴「うぇ!?そ、そ、そ、そ、そんな風ってどんな風に見られてると思ってるのよアンタ!!」 上条「んー。お前の言葉を借りれば『仲のいいお友達』ってやつか?」 美琴「そ、そ、そ、そ、そうね!!そんな感じかしら!?」 上条「そっか。…まあ、そうだよな」ギュッ 美琴「!?」(な、なんで急に握り締めるのよ~!?)/// 頬が熱くなるのを自覚しながらアイツを見ると、アイツはなんとなく寂しげな表情を浮かべているように思えた。 なんとなくそれが引っ掛かった。アイツはわたしのことどう思っているのだろう。 美琴「ア、アンタは、どう思ってるのよ。…わたしのこと」ギュッ 不意に握り締められたお返しにとばかりにわたしは質問とともにアイツの手を握り返した。 アイツの視線が、わたしの視線と重なる。 上条「あー。その上目遣いも反則だ」/// 美琴「アンタわたしより背が高いんだから仕方ないじゃない」 上条「そ、そうか。まあ、御坂は俺のことを、記憶のことも含めてよく知ってくれている数少ない仲間…っていうか、戦友?とも違うな…。うーん。なんて言えばいいんだ?」 美琴「…」(まあそんなことだろうとは思っていたけど) 上条「まあ、気心の知れた相手って言えばいいのか?そんな感じだったんだ。…昨日までは」 取って付けたように漏らした『昨日までは』という言葉に、美琴は違和感を感じずにはいられなかった。 美琴「どういうこと?」 上条「えーっとだな、ちょっと長くなるけど、聞いてくれるか?」 美琴「いいわよ」 上条「とりあえず、階段のところにあるベンチまで行こう」 美琴「別に歩きながらでもいいけど?」 上条「あんまり他人に聞かせたくないんだよ。あそこなら誰かが来てもすぐわかるし、寒さも凌げるから」 美琴「わかった」(他人に聞かせたくないって、どういうこと?)ドキドキ 建物の中に入り、ファンシーショップやブティックの間の通路を、二階へと続く階段へと歩いていく。 そのまま階段を上り、中二階の登り階段側に置かれたベンチの前で立ち止まると、―気のせいじゃなければ少し躊躇いながら―繋いでいた手を離した。 上条「座って」 美琴「うん」 促されるまま、わたしはベンチに腰を下ろす。するとアイツはわたしの右横に腰を下ろして、膝の上で両手を組む。 上条「…昨日、お前に電話しただろ?買い物に付き合ってくれってさ」 美琴「うん」 上条「あれさ、友達と他愛のない話をしているうちに、御坂のことが話題になって、誘ってみろって言われて買い物に誘ったんだ。アイツが言うには二つ返事で了承するからって」 美琴(なんだ。自分から誘おうと思ったんじゃないんだ)ショボン 上条「で、そのとおりになってさ、…正直言うと焦った。断られると思ってたから」 美琴「…」(あー。コイツの中じゃ断られること前提だったから勝手に勘違いしたのね) 上条「それで、部屋に帰ってから、気が付くと御坂のこと考えてたりしてさ」 美琴(え?それって?) 上条「俺って結構、御坂に助けてもらってるなとか思ったりなんかして」 美琴「そ、そんなことない…でしょ?」 上条「御坂に勉強を見てもらったおかげで補修は免れたし、家計がピンチの時にはインデックスともども美味しい豪勢なご飯を作ってもらったし、御坂になら安心して背中も任せられるし」 美琴「べ、別にそんな大したことじゃない」アセアセ 上条「いやいや、そんな謙遜しないでくれ御坂。インデックスのこと何かとフォローしてもらったりさ、ホント、感謝してる」オジギ 美琴「まあ、女性にしかわからないことってあるしね。むしろアンタが完璧にあの子のことフォローできてたら退くわよ」 上条「はは。確かにな。ま、ともかく上条さんは御坂に感謝してるわけですよ」 美琴「はいはい。あの子のことは今、関係ないでしょ?」(今はアンタの話をしてるんでしょうが) 上条「悪い。話が逸れたな。えっと、どこまで話したっけ」 美琴「感謝してる、ってトコ」 上条「そ、そっか。…えーっと、そんなわけで今朝も朝も早く目が覚めたりなんかしてさ」 美琴(わたしなんて眠れなかったんだから。…なんて言ったらどう思うかな?) 上条「早めに部屋を出て公園で御坂を待ってるときに、なんつーか、凄い楽しみにしてる自分がいてさ」 美琴「ちょっと待ってアンタ。そういえば震えてたけど、いつから公園で待ってたのよ」 上条「ん?御坂が来る十五分くらい前かな」 美琴「そ、そう」(ん?コイツ今、『凄い楽しみにしてる自分がいて』って言った?) 上条「おう。それでお前が来て、いきなりアレだろ?上条さん頭の中が真っ白になりましたよ」 美琴「う、アレは、アンタが寒そうだったからつい、その。…黒子にくっつかれたとき温かかったから、ね」カァッ 上条「やっぱり女の子のスキンシップだったんだな。うんうん。次からは気をつけような」ナデナデ 美琴「うにゃっ、いきなり撫でるな!」/// 上条「ビリビリ対策です。さすがにここで電撃はよろしくないので」ナデナデ 美琴「うぅ」/// 上条「それでまあ、ゲコ太のためにカップルケーキセットを頼んで、いろいろやっちゃったわけですけど」カァッ 美琴「…何でそこで赤くなるのよアンタ」 上条「…スマン、…その、ゲコ太思い出した」カァッ 美琴「よーし今度こそ今すぐ忘れろ忘れなさい忘れるのよ!」 上条「お、お、お、落ち着いて御坂さん!もうちょっとで上条さんの話し終わるから!」 美琴「…それで?」 上条「俺は友達に『デートの邪魔するな』って言っただろ?その後、御坂が白井に同じこと言ってさ」 美琴「う、うん」/// 上条「それを聞いてさ、俺、喫茶店を出ても御坂とデートしていたいって思ったんだわ」カァッ 美琴「…え?」 上条「それで御坂の手を掴んで、とりあえずどう伝えればいいものかって考えていたら、声をかけられたってわけ」 美琴「…ちょっと待って、整理させてくれる?」 上条「ああ」 美琴「昨日から今朝のアンタの心境は、…まあ置いといて」 上条「ひどっ」 美琴「簡単に言うと、わたしとデートしたいってこと…かな?」ドキドキ 上条「う…、はい。そうです」カァッ 真っ赤になって視線を逸らすアイツ。 『デートしたい』っていうのを素直に認めたのは嬉しいけど、問題はそこじゃなくて。 美琴「…ねえ、わかってる?アンタ」 上条「なにをでございましょう?御坂さん」 美琴「デートの意味」 上条「う…。まあ、わかっているつもり…です」カァッ 美琴「ふぅん。じゃあ、…その前にすることがあるんじゃない?」 大事な、とても大事なこと。 上条「あー、御坂。ひとつ聞いていいか?」 美琴「なによ?」 上条「そうなったら、…お前は俺とデートしてくれるのか」/// 美琴「…アンタ、ずるい」 上条「な、なんでだよ?」 美琴「わたしの答えを聞いて、回避しようとしてるの見え見えじゃない」ハァ 上条「う…」 美琴「…まあ、わたしは嫌いじゃないわよ。アンタのこと」/// 上条「…」 美琴「…」ドキドキ 上条「御坂…」ドキドキ 美琴「…」ドキドキ 上条「…」ガバッ アイツは、掠れた声でわたしを呼ぶと、次の瞬間、左手でわたしを抱き寄せた。 美琴「ふにゃっ!?」ビクッ 上条「悪い。お前の顔見て言えないから、こうさせてくれ」ダキッ 美琴「う、うん…」ドキドキ 上条「好きだ!御坂。付き合ってくれ」/// 美琴「…」 上条「…」ドキドキ 美琴「…うん」 嘘みたい。 これって、夢じゃないよね? 美琴「…ね、ねえ?」 上条「な、なんだ?」 美琴「わたしで…いいの?」 上条「御坂じゃなきゃ、嫌だ」 美琴「ホント?」 上条「本当だ」 美琴「じゃあ、もう一回、わたしを見て、言って」 アイツの左手をそっと押しながら、わたしはアイツへと向き直った。 アイツも、左手を離しながら、わたしの方を向く。その顔は林檎のように真っ赤だった。 上条「わたくし、上条当麻は御坂美琴が好きです。付き合ってください」/// 美琴「…わたし、御坂美琴も上条当麻が、好きです」/// そう返したわたしの顔も、きっと負けず劣らず真っ赤になっているだろう。 上条「み、さか…」 想いが止まらない。気が付くとわたしは言っていた。 美琴「ずっと、好きだったの」 上条「…マジで?」 美琴「…アンタは、まったく気づいてなかったけど」 上条「悪い」 美琴「でも、アンタが言ってくれたから、許す」 上条「御坂…」 美琴「ねえ、最初のお願い。彼氏なら、わたしのこと、名前で呼んで」 上条「…美琴」 美琴「よく、できました」ニコッ 上条「はは。なんだよそれ」 美琴「えへへ」 上条「あ、じゃあ、お前も俺のこと名前で呼んでくれるのか?」 美琴「ふにゃ!?アンタのことを名前で!?」カァッ 上条「俺だけ名前で呼ぶんじゃ不公平だと思いますけど?」 言われてみて気付く。確かに不公平かもしれない。えーっと、コイツの名前は…。 美琴「と、と、と、と、とうみゃ!?」/// 思いっきり噛んだ。慣れないことはしちゃいけない。 上条「なに噛んでんだ、落ち着け」 美琴「だ、だ、だ、だって、今までそんなこと考えてなかったし」/// 上条「付き合うことになったら名前で呼ぶとか思わなかったのお前?」 美琴「ことごとくスルーされてる相手と付き合うことになった後のことなんて考えられないわよ」 上条「…あー、スマン」 美琴「わかればよろしい」 上条「…俺は、たまに名前で呼んでたけどな」ボソッ 美琴「へ!?それってどういうこと!?」 上条「んー。今考えると結構前からお前のこと好きだったのかもしれない。お前が中学生だからストッパーかけてたんだと思う」 美琴「そ、そういうものなの?」 上条「たとえば、お前の同級生が小学生の男の子を好きだって言ったらどう思う?」 美琴「…ショタコンってやつかしら?」 上条「そうだろ?だから俺が中学生を好きだって言うと、同級生からロリコンと思われるわけだ」 美琴「ああ、そういうものなのね」 上条「そうなんですよ」 美琴「アンタとわたし、二つしか違わないんだけどねー」 上条「そうだな」 美琴「そのくらいの差って普通よね?」 上条「ああ」 美琴「じゃあ、考えるのやーめた」ダキツキ 上条「お、おい、当たってる。当たってるから」/// 美琴「嬉しいでしょ?と・う・ま」ニヤニヤ 上条「お前、キャラ変わってるぞ!?」カァッ 美琴「いいじゃない。積極的な彼女は嫌い?」ギュッ 上条「嫌いじゃない、嫌いじゃないけど、ここではヤバイ」 美琴「むー。どうしてよ?」 上条「馬鹿!お前、健全な男子高校生の性欲舐めるな!」 美琴「せっ!?」/// 上条「とりあえず離れる、離れれろ、離れましょう!そして上条さんにクールダウンの時間をください!」 美琴「せ、せ、せ…」アワアワ 上条「おーい、美琴さーん?」 美琴「ふにゃあああああっっ!!」プシュー 上条「み、美琴!?なんで倒れるの!?ふ、不幸だああああああ!!」 それぞれ、大きな紙袋を抱えて、巫女装束が似合いそうな黒髪の少女と背の高い青髪の少年が肩を並べてショッピングモールを歩いている。 青ピ「ホンマ助かったわ。ありがとな、姫神ちゃん」 姫神「ううん。こちらこそ。ありがとう」 青ピ「どうして姫神ちゃんがお礼言うんや?」 姫神「私も。クリスマスオーナメント買いに来たから」 青ピ「ってことは、もしかしてボク、姫神ちゃんとお揃いのツリー!?」ハッ 姫神「お揃いってことは無いと思う。あと。小萌のツリーだし」 青ピ「小萌先生のツリー!?」 姫神「明日。小萌の家でクリスマスパーティ」 青ピ「なんやて!?」 姫神「女の子だけ。…あ。あの子は男の子だったかな?」 顎に人差し指を当てて考えるようなポーズをとりながら、少女が言うと、少年のこめかみにビキッっと青筋が浮かび上がる。 青ピ「…ボク、そいつに殺意が芽生えたで」 姫神「ふふ。シスターの連れてくる猫だけど?」 青ピ「猫かい!」 姫神「ふふ」 青ピ「…姫神ちゃん、案外、意地悪やな」 姫神「そうかな?」 青ピ「うん。今のわざとやろ?」 姫神「ふふ。どうかな?」 そう言って笑う少女を、背の高い青髪の少年は眩しそうに見つめていた。 青ピ(あかん。その笑顔は反則やで) 姫神「どうしたの?青ピ君」 青ピ「んー?姫神ちゃんは今日も綺麗やなーって思って見とれてた」 姫神「青ピ君は。お世辞がうまいね」 青ピ「お世辞じゃないで?姫神ちゃんはホンマに綺麗やし」 姫神「ふふ。さっそく猫のお返し?」 青ピ「ま、そういうことにしておくわ」 姫神「ふふ」 パステルピンクに彩られたクレープショップの前で青髪の少年が振り返る。 青ピ「さ、ついたで。姫神ちゃん、なに食べるん?」 姫神「チョコバナナストロベリースペシャル」 青ピ「じゃ、ボクはハニーベリーズで。…おにーさん、作ってる間に自販機で飲みもん買って来てもええ?ほな、ちょっと行ってくるわ。姫神ちゃん、なに飲む?」 姫神「んー。ココア」 青ピ「おっけー。ほなちょっとここで待ってて」 姫神「うん」 そう言うと青髪の少年は自動販売機まで走っていき、飲み物を二本買うと、また走って戻ってくる。 それから店先に置かれたベンチに持っていた紙袋を置いて、手招きをした。 青ピ「姫神ちゃん、ここ、ここ座って」 姫神「わかった」 青ピ「はい、ココア」 姫神「ありがとう」 青ピ「お、クレープできたみたいやな?もろてくるからちょっと待ってて」 姫神「うん」 青ピ「おおっ!?スペシャルってごっついなー。スプーンまで刺さってるんや。…ほなこれで。おおきに。姫神ちゃん。お待たせ」 姫神「ありがとう。いただきます」パクッ 青ピ(可愛いで。姫神ちゃん) 姫神「ふふ。美味しい。幸せ」パクッ 青ピ「…ボクも幸せや」 姫神「まだ。食べてないのに。幸せ?」 青ピ「うん。姫神ちゃんの幸せそうな顔見たら、幸せやなーって」 姫神「そ。そうなんだ」/// 青ピ「へ、変なこと言うてゴメン。お、ホンマや、美味いで。このクレープ」パクパク 姫神「…」パクッ 青ピ「…」(や、やってもうた) 姫神「…」パクッ 青ピ(ちょい赤くなってる姫神ちゃんもなかなかええなぁ)パクパク 姫神「…」パクッ 青ピ(伏せ目がちなところもなかなか…)モグモグ 姫神「…そんなに。見ないで」/// 青ピ「ス、スマン。でも、見惚れちゃって」/// 姫神「馬鹿」/// 青ピ「…姫神ちゃん、やっぱりわざとやってるやろ。さっきから男の萌えポイントつきまくりやで」 姫神「そんなの。知らない」/// 青ピ「可愛い。可愛すぎるで、姫神ちゃん」 姫神「青ピ君。なんか。怖い」 青ピ「姫神ちゃんが可愛すぎるのがアカンのや」 姫神「私は。可愛くなんて。ない」 青ピ「姫神ちゃんは自分の魅力に気がついてないんやな」 姫神「もう。知らない」パクパクッ「…ぐむ!?」ドンドン 青ピ「姫神ちゃん、落ち着いて!ココアを飲むんや!ココア!!」 姫神「…」ゴクッゴクッ「…はぁ」 青ピ「大丈夫?」 姫神「な、なんとか」 青ピ「よかった」ホッ 姫神「…ごめんね」 青ピ「なにが?」 姫神「心配させた」 青ピ「心配するんはボクの勝手やん?姫神ちゃんが悪く思うことないんやで?」 姫神「でも…」 青ピ「デモもヘチマもないで?」 姫神「…」 青ピ「…じゃあ、明日もボクの買い物付き合ってや。それでご破算」(なーんて) 青髪ピアスはあくまで冗談で誘ったのだが、姫神秋沙は唇に人差し指をあてて何か考えるようなそぶりを見せた後、小さく頷いた。 姫神「別に。いいよ」 青ピ「…マジで?」 姫神「うん。小萌の家のパーティーは夕方からだし」 青ピ「言ってみるもんやなー」 姫神「ふふ。なにそれ」クス 青ピ「じゃあ、今日はこれで帰るとしよか。…ホンマは今日買い物しとこ思たけど、明日付き合うてもらえるし」 姫神「わざわざ出直すなんて。何を買うの?」 青ピ「せやなー。姫神ちゃんへのクリスマスプレゼントとか」 姫神「ふふ。お返ししなくてもいいなら」 青ピ「姫神ちゃん。悪女やなー」 姫神「ふふ。そういうことにしておく」 青ピ「じゃ、途中まで一緒にいこか?」 姫神「そんなこと言っても。小萌の家は。教えない」 青ピ「あ、ばれた」 姫神「ふふ。残念でした」 学生寮方面(常盤台中学前方面)へのバスが出るバス停へ向かいながら、並んで歩く。 青ピ「で、明日はどないする?」 姫神「んー。9時40分ごろにバス停」 青ピ「また中途半端やな」 姫神「バスの時間に合わせただけ」 青ピ「…姫神ちゃん。できる女やね」 姫神「ふふ」 青ピ「ほなそれで。お、ちょうどバスがきたやん」 姫神「ナイスタイミング」 青ピ「ほな、帰ろか」 姫神「うん」 青ピ(あれ?姫神ちゃんとボク、ええ感じやない?) 姫神「どうしたの?青ピ君?」 青ピ「ん。なんでもないで」 姫神「そう」 青ピ「うん」 バスに乗り込むと、少女は運転席の後ろの席に座り、少年はその後ろの席に座った。 少女の隣が空いていたが、そこに座る勇気は少年には無かった。 姫神「隣。座ればよかったのに」 青ピ「いや、狭いやろ?」 姫神「そうかな?」 青ピ「そうやで」 姫神「まあ。これでも。話はできるけど」 青ピ「せやな」 姫神「…ねえ。青ピ君」 青ピ「ん?なんや?姫神ちゃん」 姫神「今日。楽しかった?」 青ピ「ああ。楽しかったで」 姫神「…そっか」 青ピ「うん」 姫神「…ありがとう」 青ピ「なんか、今日、姫神ちゃんそればっかりやな」 姫神「そうかな?」 青ピ「そうやで。今日は、姫神ちゃんも楽しんでくれたなら、ボク、それで満足や」 姫神「…うん。楽しかった」 青ピ「そない言ってくれると嬉しいわぁ」 姫神「ふふ」 目的地がアナウンスされると、少女が手を伸ばしボタンを押した。 ほどなくしてバスが停車し、少女が立ち上がる。少年もそれに続いて立ち上がるとバスを降りた。 姫神「じゃあ。また。明日」 青ピ「うん。また明日」 少女が建物の影に入って見えなくなるまで、少年はその後姿を見送ると、自分も下宿へと向かって歩き始めた。 佐天「う~い~は~る~。隙あり!」バサッ 初春「ひゃあああっ!!捲らないでください佐天さん!!」/// 佐天「ピンクの水玉ゲットォ~!」 初春「そんな大声で言わないでください!!もおっ!!」/// 佐天「あはは。ゴメンゴメン。ところで、初春?御坂さんはここで間違いないんだよねえ?」 初春「…う。駄目ですよ佐天さん。御坂さん怒りますよ」 佐天「えー。昨日、あたしをハブってマコちんたちとバーガーショップ行ったのは何処の誰かなあ?」 初春「だ、だって佐天さん、用事があるってさっさと帰っちゃったじゃないですか」 佐天「まーそれはそれ。ホントは初春だって見たいんでしょ?恋する乙女の御坂さんをさ」 初春「わ、私はやっぱり、覗きはいけないことだって思うんです」 佐天「まーまー、そんな都合よく見つかるとは限らないんだし。それにあたしたちはショッピングに来たんだからさ。たまたま御坂さんに遭遇するってことがあるかもしれないってだけよ」ニカッ 初春「そうですよね。そんな都合よく見つかるなんて…ことは…」ハッ 言いかけて頭に花飾りを付けた少女は足を止め、目を見開いて口を押さえる。その頬はみるみる真っ赤になっていった。 初春(み、み、み、み、御坂さーーーん!!)カァァァッ 佐天「初春?どうしたのーって、ぬっはぁっ!?」 初春「だ、だ、だ、駄目ですよ佐天さん!大声出しちゃ!」ボソボソ 佐天「いやー。衝撃の出来事にあたくし佐天涙子、困惑しております」ボソボソ 近くのファンシーショップを覗いている振りをしながら、少女たちは階段の方をチラ見していた。 踊り場のベンチに座っているツンツン頭の少年。その少年に膝枕されて横になっているのは、少女たちの友人に間違いなかった。 佐天「あれって、どういうシチュエーションなの?」ボソボソ 初春「御坂さん、眠っているみたいですね。昨日眠れなくって力尽きたとか…じゃないですかね」ボソボソ 佐天「おおっ!?髪を撫でてる。それに優しい目で御坂さんを見てますよ」ボソボソ 初春「うーん。恋人同士って感じですね。御坂さんの様子だとそういうのじゃないって思ったんですけど」ボソボソ 佐天「お?御坂さんがお目覚めのようです」ボソボソ 初春「あ、御坂さん赤くなってる」ボソボソ 佐天「慌てて立ち上がって後ずさった。あちゃー、修羅場か?」ボソボソ 初春「喧嘩ではないと思うけど、御坂さんにとって膝枕は予想外だったんじゃないかな?」ボソボソ 佐天「出るか!電撃…って、ぬっふぇっ!」/// 初春「はわわわわわっ!!」/// 二人の少女の目に飛び込んできたのは、ツンツン頭の少年が少女を抱きしめる光景だった。見ている方が恥ずかしくなるような雰囲気が二人から迸っている。 佐天「…い、行こっか?初春」/// 初春「そ、そうですね」/// いたたまれなくなった二人は慌ててその場を後にしたのであった。 ――― ――そっと愛しい少女の髪に指を通すと、自然と口元に笑みが浮かんだ。 夢じゃない。現実が幸福で塗り潰されていくような感覚。 少年は穏やかな微笑を浮かべ、眠る少女をただ、見つめていた。 ――― ――上条当麻は御坂美琴が好きです。付き合ってください。 肩を引き寄せられての突然の告白。 今まで、そんなそぶりなど見せたことの無い少年からの、突然の告白。 胸が壊れそうなほど、激しく早鐘を打っている。 まるで目覚まし時計の鐘のように。 美琴「…ん」 上条「…」 美琴「んぅ。…夢かぁ」ショボン ――アイツが、あんなことを言うのはいつも夢の中のことだ。 だから、目が覚めたとき、傍にアイツがいなければ、それは夢ということになる。 美琴(ん?でもここ、寮じゃない…) 上条「何が夢だって?」 頭の上から声をかけられる。紛れも無くアイツの声。 美琴「ふぇ!?ア、ア、ア、ア、アンタ!!って!うぇぇぇぇ!?」/// 上条「お目覚めですか。姫」 美琴「うぇぇぇ!?ひ、膝、膝枕!?」/// 上条「落ち着け、美琴」 美琴「あ、あぅあぅ」(な、名前で呼ばれた)/// 上条「目、覚めたか?」 美琴「さ、覚めた覚めた!そりゃもうばっちり!!」/// 言いながら少女は飛び起きて後ずさり、今、自分が置かれている状況を整理する。 ――喫茶店でカップルケーキセットを食べて、階段の踊り場でアイツに告白されて、自分も告白をして。そこで目を覚まして、アイツに膝枕をされていて。 美琴「あれ?…夢じゃない?でも夢?あれ?あれ?」 上条「なに混乱してるんだお前」 美琴「混乱?」 上条「…ったく。仕方ねえな」ギュッ 美琴「ふぇっ!?」/// ――何の前触れも無く、アイツがわたしを抱きしめる。でも、ぜんぜん嫌じゃなくて。 上条「好きだぞ。…美琴」 美琴「…あ」 上条「彼女になってくれるんだろ?」 ――ああ。そっか。夢じゃなかったんだ。 美琴「…うん。…当麻」ギュッ 上条「よく言えました」 美琴「馬鹿」 上条「寝ぼけてた奴に言われたくないな」 美琴「う…」 上条「…まあ、一世一代の告白を思い出していただけたなら、上条さんはそれで満足です」 美琴「…ありがと」 上条「どういたしまして」 ――忘れない。忘れたくない。 あんなにまっすぐで、とんでもなく心に響く言葉。幸せってああいうのを聞いたときの気持ちを言うのかもしれない。 わたしも素直に自分の気持ちを伝えられたし。 美琴「…あー…と、当麻のせいだ」 上条「ん?何が?」 美琴「わたしがこんなところで気絶したの。変なこと言うんだもん」/// 上条「そんな変なこと言ったか?俺」 美琴「『健全な男子高校生の』とか」ボソッ 上条「…あー。悪い。その、いっぱいいっぱいだったからさ」/// 美琴「なによそれ」 上条「…っ、さすがに公共の場で襲うわけにはいかねえだろうが」/// 美琴「なっ!!」(お、襲うって!?)/// 上条「でも、お前の柔らかさに我を忘れそうになったのは事実でありますので、美琴さんへの戒めの意味も含めてああいう表現を使用した次第であります」 美琴「あぅ…」/// 上条「ってか、こうしているだけでも、結構きてるんだけどな」/// 美琴「そっか」(わたしもドキドキしてるけど) 上条「というわけで、一旦離れましょう」 美琴「ん。わかった」 上条「でも、手は握るけどな」ギュッ 美琴「ん…。ありがと」ギュッ ――― セブンスミスト2階。紳士服売り場 上条「お、これは温いな」 美琴「わたしのお勧めはこれ。着てみて」 上条「軽っ!?なにこれ?」 美琴「カシミアよ。わたしのマフラーやコートと同じ」 上条「へー。いいな。これ」 ボタンを留めて体を動かしてみる。軽くて動きやすい。 美琴「…じゃ、それにする?」 上条「…へ?」 美琴「クリスマスのプレゼント」 上条「いやいや、美琴センセー。これ、上条さん家の一ヶ月の食費並のお値段ですよ!?」 美琴「わたしとお揃いって、嫌?」クビカシゲ(お揃いって言っても素材だけなんだけど) 上条「嫌ってことは無いけど、貰うには高すぎるって言うかなんていうか…」 美琴「わたしは、お揃いにしたいんだけど」 上条「うーん。でもなあ」 美琴「だいたい、この時期になってコートも着ていないなんておかしいわよ」 上条「いや、だから見に来たわけで」 美琴「それ、気に入ったんでしょ?」 上条「まあ、そうなんだけど」 美琴「じゃあ、わたしが選んだんだし、プレゼントさせて」 上条「だからお値段がですね…」 美琴「あのねえ、わたしとしては今朝みたいに震えてるアンタを見たくないの。…わたしの我侭なの。聞いてくれない?」 上条「美琴…」 美琴「駄目、かな?」ウワメヅカイ 上条「…貧乏学生の上条さんがこんな凄いコート着てたらおかしくない?」(その上目遣いは反則だって) 美琴「デザイン的にはよくある普通のロングコートだし、大丈夫だと思うけど?似合ってるし」 上条「そ、そっか」 美琴「うん。いいと思う」 上条「あーもー。負けた負けた。でも本当にいいのか?」 美琴「うん」ニコッ 上条「じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」ペコッ 美琴「じゃ、行きましょ」 上条「え?おい、脱がなくていいのか?」 美琴「いいのよ。そのまま着ていけば」 戸惑う少年の手を引き、少女は慣れた感じでカウンターにいた店員に声をかけ、カードを出して会計を済ます。その間に別の店員が少年の着ていたコートのタグや留め紐(コートのスリットを×で縫ってあるやつ)を取り除いてくれた。 美琴「お待たせ。準備できた?」 上条「ああ。全部取ってもらった」 美琴「じゃ、今度は下に行くわよ」 そう言うと、少女は少年の左腕を掴む。 美琴「腕、組んでいい?」 上条「しがみついたりしなければ、むしろ組みたい」 美琴「じゃ、組もっと」ギュ 上条(柔らかいものが当たってるんですけど、気のせい気のせい)「…なんか、店の商品を着たまま出て行くのって緊張するなあ」 美琴「ふふ。その気持ち、わかる気がする」 上条「で、何を見るんだ?」 美琴「んー。ダウンジャケットがいいかな」 上条「そのコート、よく似合ってるけどな」 美琴「ん?あ、わたしじゃなくってあの子にね。あの子も持ってないでしょ?防寒具」 上条「え?インデックスか?」 美琴「うん。アンタがコート着てるのを見て、あの子の分が無かったら噛みつかれるんじゃないの?」 上条「う…。ひ、否定できない」 美琴「だからあの子にもクリスマスプレゼントってことで。あ、わたしが贈りたいだけだから、アンタは気にしないで」 上条「悪いな。ありがとう」 美琴「だーかーらー。アンタに感謝される筋合いは無いっての」 上条「でも、ありがとう」 美琴「はいはい」 ――― 小萌「さーて、これで完成ですよ」 インデックス「なんだか楽しみなんだよ」 結標「ちょっと点けてみましょうか」 姫神「じゃあ。スイッチを入れる」カチ 小さいながらも細々と飾り付けられたクリスマスツリー。その電飾がキラキラと光を放つ。 インデックス「綺麗なんだよ!」 小萌「うん。綺麗ですねー」 結標「…なんか、こういうのも悪くないわね」 小萌「ふふ。そうですね」 姫神「綺麗」 インデックス「小さいけど、ヤドリギには使えそうなんだよ」ボソッ 小萌「シスターちゃんはロマンチストですねー」 インデックス「そ、そんなんじゃないんだよ!?」カァッ 姫神「…」 小萌に冷やかされてぱっと頬を染めるシスター。上条君。罪な人。 結標「ヤドリギって、なんだっけ?」 小萌「ふふふ。北欧にはクリスマスのヤドリギの下でキスをしたカップルは永遠に幸せになれるという言い伝えがあるのですよ」 結標「あー、私には関係ないわね」 インデックス「わ、わ、私にも関係ないんだよ!シスターとしてこもえやあいさやあわきがそういう風にしたくっても大丈夫だって思っただけなんだよ!」カァッ 小萌「シスターちゃーん?どこにそんなヤローがいるのか先生に教えてくれるかな?」 結標「だから私は関係ないって言ってるじゃない。それに、ヤドリギの下って言うくらいなんだから、こんなツリーじゃなくってショッピングモールのツリーの方がいいんじゃない?」 ショッピングモール。上条君と女の子が一緒にいたところ。 インデックス「あいさ。どうしたのかな?」 姫神「…上条君は。明日はここに来ないかも」 インデックス「とうまが?なんで?」 姫神「えっと。ごめん。正直に言う。上条君。さっき女の子とショッピングモールでデートしてた」 インデックス「…そっか。たぶんみことだよね」 姫神「みこと?」 インデックス「うん。たまにご飯作ってくれたり、服とか買ってくれたりするの」 小萌「上条ちゃんも隅に置けないですねー。超能力者と付き合っちゃうなんて」【注:新約2巻での砂場に落とした磁石に付いた砂鉄的な遭遇後、門前払い後に電気を纏いながら暴れているのは第三位の御坂美琴だと結標に説明されている】 結標「あれ、姫神さんも会っているはずだけど?常盤台の女の子に」 姫神「うーん。覚えていない」【注:新約2巻での砂場に落とした磁石に付いた砂鉄的な遭遇時、暴れる吹寄を抑えていたため】 インデックス「とうまが幸せなら私はそれでいいんだよ」ポロッ 小萌「シスターちゃん、泣かないで」 インデックス「あれ?おかしいな。なんで…ふぇ、ふぇぇぇぇん」ポロポロ 小萌「よしよし、上条ちゃんは悪い子ですねー。シスターちゃんを泣かせるなんて」ナデナデ インデックス「とうまのせいじゃないんだよ。みことのせいでもないんだよ。でも、涙が出ちゃうんだよ」ポロポロ 小萌「はいはい。思いっきり泣いてすっきりしちゃいましょうねー。夕御飯は豪華絢爛焼肉セットですよー」ナデナデ インデックス「ふぇぇぇぇぇんっ」ポロポロ ――― 上条「…なあ」 美琴「なーに?」 上条「今日、上条さん的にはクリスマスプレゼントとして髪飾りでも贈ろうかと思っていたのですが」 美琴「そ、そうなんだ」 上条「その、名前で呼び合える仲になったことだし、…上条さんって実は独占欲が強いわけでして」ギュッ 美琴(独占欲って)/// 上条「ペアリング、なんてどうだ?あまり高いのは買えないけど」 美琴「うん!嬉しい!」ギュッ【注:この話では、新約3巻のアレはありません】 上条「じゃ、じゃあ、どの店がいいかな?」 美琴「そうね。友達がよくネックレスとか見ているお店があるから、そこに行ってみよっか?」ニコッ 上条「お、おう」 必然的に少女が少年を引っ張っていく格好となる。少女はとても嬉しそうな笑みを浮かべていた。 ――― 初春「あ、これなんて佐天さんに似合いそうですよ」 佐天「さっすが初春。あたしの好みを良くわかっているわね」 初春「あ、これなんか御坂さんに似合いそう」 佐天「どれどれー?おー、確かに」 美琴「あー、可愛いわねー」ヒョイ 初春「あ、御坂さん」 佐天「ちょうど御坂さんに似合いそうなヘアピンの話をしていたんですよーって、ぬっふぇ!?」 初春「なに変な声出しているんです…か」/// 二人の少女は声をかけられたので友人の方へ顔を向ける。するとそこには友人と男性が仲良く手を繋いで立っていた。 美琴「あははー。邪魔しちゃってゴメンね。姿が見えたから声かけなきゃって思って」(ついでにコイツの紹介なんかしちゃったりして)/// 佐天「いや、それはわざわざ恐れ入ります御坂さん。で!そちらの方は、つまり、その、御坂さんの、…彼氏さんでよろしいですか?」 美琴「あー、うん」/// 初春「はっ、はじめまして。私、柵川中一年の初春飾利です」(あっさりと認めた!?) 佐天「あたしは柵川中一年の佐天涙子でーす。はじめまして」 上条「あ、はじめまして。…なあ美琴?いきなりお友達紹介はハードル高いんじゃないか」ボソ 佐天「うっはっ!聞いた初春!?御坂さんを名前呼びだよ、名前呼び!」 上条「!」/// 初春「さ、さ、さ佐天さーん!失礼ですよー」アワアワ 佐天「んでんで、御坂さんは彼氏さんのことなんて呼んでいるんですか?やっぱり名前呼びだったりします?」 美琴「う、うん」/// 上条「いや、最初だけでさっきから呼んでくれないじゃないか」 美琴「ア、アンタは余計なこと言わない!」/// 佐天「御坂さーん、彼氏さんもこう言ってるんですから、呼んであげたらどうですか?」ニヤニヤ 美琴(しまったー。佐天さんのスイッチ入っちゃった!!)/// 初春「さ、佐天さん!御坂さんすみません」アセアセ 佐天「彼氏さんも名前で呼んで欲しいですよね?」 上条「そ、そうだな…」ボソッ 美琴「!」 初春(そこで肯定しちゃうの!?カミジョーさん!!ああ、御坂さんが真っ赤になって…) 美琴「…と、当麻」ウワメヅカイ 初春(み、御坂さん~!?そこで名前呼んじゃうの~!?) 佐天「ぬっふぇ!熱い、熱いですねー」ニヨニヨ 上条「…まー、相思相愛ってやつだったからな」ボソッ ――――――――― 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/クリスマス狂想曲
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/306.html
小ネタ Go to part3 上条「おい」美琴「なによ」上条「パート2、もう埋まっちまうぞ」美琴「うそっ!? まだ3週間ちょっとよ!パート1は2ヵ月半近くかかってたのに!」上条「何気にばかにするな。ま、作者が増えて来た証だろ」美琴「……まぁ…そりゃそうだけど…」上条「何だよ、もどかしいぞ」美琴「……なんでもないわよ…」上条「…俺達がいちゃいちゃしてるのを見るのが嫌なのか」美琴「ちがっ! …じゃなくて、なんか、こー……やっぱなんでもないっ」上条「はぁー… アレだろ、それ見て、楽しくてにやついてんだろ」美琴「っ!! …そうよ、悪いっ!?」上条「別に悪くはないさ、ていうかキレんな」美琴「……だって……」上条「ほら、もうすぐパート3だ。まだまだ書いてくれるんだから楽しもうぜ、なっ?」美琴「…分かった」上条「ほら、拗ねるなって。笑って終わろうぜ」美琴「………」上条「みんな、俺達が好きなんだ。お互いを好きなんだ。それだけだ、別にからかってはいないぜ?」美琴「分かってる、わよ… …よしっ!」上条「つーわけでみなさん」美琴「次もよろしくね!」上条「御坂がにやにやするいちゃいちゃを随時お待ちしておrぎゃあああ!!」バリバリバリ美琴「よけーな事は言わんでいいっ!」 ――――――Go to part3:http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/6947/1264418842/
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1341.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/鶴の恩返し -⑫後日談 みんなでプールへ行ってみようか プール編- 少し時間は戻り………駐車場。 「ハァ…どうしてこんなことになってるじゃん」 バスの中、黄泉川は困っていた。 忘れ去られたように最後列でグッタリしている小萌先生の生徒が一人いた為だ。 「これは……引きずって行くしかないじゃんね」 はぁ…と一つ大きな溜息をつき、黄泉川は未だに気絶している青髪ピアスを引きずってバスを降りた。 プールの受付ホールでは小萌と寮監がベンチに腰掛けて話していた。 「やっぱり息抜きは必要ですよね」 「そうですね、寮にいるとやはり終始目を光らせてないといけませんから」 そういう他愛のない話をしているが、小萌はあることに気付き寮監に聞いた。 「それは大変そうですねー、でも今、寮監さん楽しそうな顔してましたよ」 そう、今少し楽しそうに笑ったのだ。 「まあ、手のかかるのが数人いるだけですが…この仕事結構好きですから」 ああ、寮監さんもやっぱり子供が好きなんですね。小萌はそう思った。 「やっぱり好きな仕事が出来るのっていいですよね」 「ええ、そうですね」 そんな風に話していると黄泉川がやって来た。 「こいつ置いてくなんて小萌先生も寮監さんも酷いじゃん」 黄泉川と一緒に、途中で回復した青髪ピアスが受付ホールに入って来た。 「「……………」」 小萌と寮監は、すっかり忘れてた為に沈黙。 「先生方ひどっ! 絶対みんなも忘れてるはずや……どうせ、忘れられてるんや……」 激しく落ち込んでいる青髪ピアス。 それから、4人は各自のロッカーに向かっていくのであった。 □ □ □ 一方その頃 水着に着替えた面々は、この施設で最大級の中央プール付近に集まっていた。 白い椅子に座る上条と土御門、土御門の傍に立つ舞夏。 「いやー、やっぱり夏といったら水着だにゃー」 アロハ柄の黄色の水着の土御門。 「兄貴、それはいいけどわたしの友達に変なことしたら許さないぞー?」 何故か舞夏はメイド服のままであった。 「水着じゃなくていいのかよ」 「ん? これはだなー上条当麻」 そうもったいぶる様に言うと共に、舞夏はメイド服を脱ぎだす。 「ちょ、おいっ!」 上条の過剰の反応に舞夏は黒い笑み。 「ふっふっふ、何を慌ててるんだー? 下は水着に決まっているだろー」 ………すごく心臓に悪い行為だった。 そこから少し離れたプールサイド。 そこには、黒の水着を着た少年と淡い水色にヒマワリの模様が入った水着の少女。 「ねえねえ、ミサカのこの水着はどお? ってミサカはミサカはさっきから唖然としてるアナタに聞いてみる」 くるくると回って水着を見せてくる打ち止め。 「…………あ、あァ…すごく、いいと思うぜェ」 見惚れてしまった一方通行は言葉少なくそう言った。 その近くの喫茶店。 「妹さん、パフェお待ちどうさまです」 初春はこの間のパフェのタダ券で、御坂妹に初パフェを奢っていた。 「こ、これがあのパフェですか…初めて食べます、とミサカは目の前にした可愛らしい食べ物に目を奪われます」 目の前に出されたのは可愛らしいパフェで、御坂妹はそれを見て目をキラキラさせている。 「ゆっくりと味わって食べてください、この店のパフェはとっても甘くて美味しいんですよ」 一口食べるごとに頬を緩める御坂妹を見て、初春は嬉しそうにその顔を見ていた。 人のいない、いや、近寄れない…とあるプール。 「何故、貴女と二人でこのプールに一緒に入らなければいけませんの?」イラッ 白井は隣にいるムカつく女に向けて感情を込めて言う。 「さあね、そんなに嫌なら白井さん、あなたが別のプールに移動すればいいじゃない」 対して言われた本人、結標は平然と白井に言い返す。 「先にいたのは私ですが?」イライラッ 「だったら尚の事、先に出るべきなんじゃない?」 そう、このやり取りを繰り返されてはこのプールに誰も近づけない。 「「……………」」 しばしの沈黙が続き…… {流石に長く生きてるだけあって、口では負けそうですわ……ププッ} 白井は結標に少し聞こえるような感じで悪口を言う。 「白井さん……何か言ったかしら?」イラッ 白井はニヤッと笑みをつくり。 「さあ~なんのことでしょうか?」 誤魔化す事もしない態度で嘘を言う。 そこからは立場が逆転したりしなかったりで、何度も口喧嘩が始まるのであった。 一方、その頃に吹寄と姫神は…… 中央プールの端で足だけ入れながら何か相談しているようだ。 「私って印象薄いのかな。」 「そんなことないと思うけど?」 ………聞かない事にしてあげた方がいいようだ。 そして、一番遅く入った佐天と美琴はというと…… 「ねえ……佐天さん、なんで私達だけこんな離れた所にいるの?」 「それはですね、上条さんには極上のリアクションを期待したいじゃないですか」 変なスイッチが入ってしまっている佐天に連れられ、中央プールからある程度離れているカフェに来ている。 「それは……そうだけど………なにをすればいいの?」 モジモジと頬を赤らめ、上目遣いで見てくる美琴に佐天は 「それを上条さんに今すぐ見せたいんですけどね」 「ん? なんのこと?」 本人に自覚はないようだ…今のは上条に見せれば、なんでも言う事を聞かせてしまう魔法の様な体勢だ。 「まあ、少し恥らう様にしてみれば、上条さんもぐっときて御坂さんを襲っちゃうかもしれないですね」 そんな風に言って笑う佐天。 「ふーん、襲っちゃうね……って! 襲っちゃうって……えぇぇぇっ!!」 「御坂さん、声が大きいですっ」 「あ……どうもすみません………」 店の人たち全員から注目されてしまい謝る羽目になった。 そんな風に騒がせながらも佐天の意見を聞く事になる美琴。 ちなみに昼食の際はある店に全員集合する事になっているのでそれまでが水着見せの勝負である。 □ □ □ 正午。プールにアナウンスがなる。 『待ち合わせのご連絡を致します。第七学区からお越しの~』 そう、団体で来ている人達にはアナウンスをしてもらえるサービスがあるのもここの売りの一つであった。 『同じく、第七学区からお越しの土御門様御一行は南方フロアの南国プール中州にご集合下さい。』 アナウンスがそう告げ、本日来ているメンバーが南方フロアに向けて移動し始める。 「それにしても、便利なサービスだよな」 上条と土御門、青髪ピアスはアナウンスを頼んだ後に南方フロアに向っている。 「って、そないな事よりも、お前ら薄情もんやー!!! 置き去りにして忘れてたクセにその事を無かった事にするなんてー!!!」 そう、青髪ピアスは大分遅れて合流したのだ。 どうやら皆に存在を忘れ去られ、バスに置き去りにされているところを黄泉川先生が発見したらしい。 「まあ、落ち着くぜよ」 「そうだ、落ち着け」 そう諭す上条と土御門に、しぶしぶ落ち着く青髪ピアス。 「そうそう、そういえば小萌先生たちどんな水着なんやろー」 落ち着いたと言うよりは別の何かを気にしだしたようだ。 「小萌先生はピンクの子供用水着じゃないか?」 「ふっ、甘いぜよカミやん……俺様はあえて黒のハイレグと予想するぜよ」 「残念ながら、ワテは純白の三角ビキニをご所望やで~」 三者三様、今日も馬鹿全開のデルタフォースであった。上条は普通…か? 喫茶店にて 「おっ、集合時間みたいだぞー」 「そうみたいですね」 「それでは行きますか? とミサカは腰を浮かしつつ今更なことを聞いてみます」 パフェを食べていた御坂妹たちは、途中で舞夏が来たのでそのままティータイムに入っていたのだ。 「それにしても、プールに来たのに飲んで食べてしかしてないですね……私達」 「それなら午後はいっぱい運動してカロリーを消費しましょう、とミサカは提案してみます」 喫茶店を出て、南フロアに向け歩く三人。 「そうだなー、せっかくプールに来たんだから泳いだ方がいいだろうなー」 もっともな事を言う舞夏。 「まあ、みさかの妹を見た限りではスタイルはすでに抜群だがなー」 「ちょっ、舞夏さん私を哀れむような眼で見るのはやめてくれませんかっ」 「ミサカは初春さんに同情のエールを送ります、と共にミサカはかすかに初春さんに勝っていることで優越感に浸ります」 フッ、と笑みを作る御坂妹にフッフッフと黒い笑みの舞夏、泣きそうになって落ち込む初春もどこか楽しそうだ。 そして、あの11次元計算娘の二人は…… 「だからっ、貴女はいい加減にストーカーみたいに私の前に現れるのをやめてくださいませんっ!」 「同じ様な思考パターンを持つんだから、仕方ないんじゃない?」 まだ言い合っていた、というか段々酷くなっている。 「大体、以前会った時に思ってましたが……貴女は女らしさと言うものを持った方がよろしくなくて」 「ふん、そんな変態水着を着ている白井さんからそんなことを言われてもまったく同意できないんだけど……」 どっちが正論であろうか…… 変態水着ではあるが口調やら、立ち振る舞いがお嬢様のテレポーター 行動や言動は少しガサツな様子が見受けられるが、スタイルや水着は至って女の子らしいムーブポイント 「それよりも、早く向わない? さっきアナウンスなってたから」 「え、あ、そ…そうですわね」 まあどっちが正論でも、結標が一歩ひいて大人の対応をとった為に一時休戦。 アナウンスにしたがって集合場所に二人で向かう様であった。 そして…… 「結局、上条さんに会えませんでしたね」 「うう……これなら初めから当麻と一緒に回った方がよかったじゃない」 さらっと言ってしまった佐天とは対象的に、美琴は落ち込んでいる。 「でも御坂さん、その水着褒められるか心配してたじゃないですか」 「……それは、そうだけどさ」 そう言った美琴はハァ…と溜息をついた。瞬間。 ギュムッ、と誰かに抱きつかれた。 「お姉さまー、ってミサカはミサカは子供みたいに抱きついてみたりー」 どうやら打ち止めのようだ。 「おいっクソガキィ、走って転んだらあぶねェだろォがよォ……」 その後ろから一方通行が現れる。 「ちゃんと打ち止めちゃんのこと見てますねー、一方通行さん」 「まァ…それが俺の仕事見てェなもンだしなァ」 目を閉じ、めんどくさそうに頭を掻きながら佐天に言う一方通行。 「って、御坂さん? あれ、どこいったんでしょうか?」 「……ガキもいねェってことは先に行ったんじゃねェかァ?」 一瞬、目を放した隙に美琴と打ち止めは見える所から消えていた。 「ハァ……まァ、行った所は多分一緒だからよォ、ぼさっとしてねェで行くぜェ」 一方通行は佐天を促し、話しながら集合場所に向うのであった。 その二人を見送る二人の少女。 「一緒に行かなくてよかったの?」 「うん、ってミサカはミサカはハッキリ言ってみる」 美琴と打ち止めだ。少し行った所の店に隠れるようにして、二人を見ていた。 「あの二人が仲がいいのも不思議よね」 「そお? ってミサカはミサカはお姉さまの一言に疑問を浮かべてみる」 打ち止めのその一言から、普段三人の時はよっぽど仲がいいらしい。 「それじゃ、二人の邪魔しちゃ悪いから少し遠回りしながら行こっか?」 「うん、ってミサカはミサカは意見に賛同してみたり」 そう言って二人は姉妹のように手を繋いで集合場所に向うのであった。 □ □ □ 集合場所にはすでに大人3人組と吹寄、姫神の計5人が来ていた。 「さっそく集まってるみたいで何よりだにゃー」 「それはいいが土御門、店は決めているのか?」 のんびりとした口調で話す土御門に吹寄は少し不機嫌に聞いてきた。 「ん? それなら、あそこの店がそうぜよ」 そう言って指差したのは少し高そうな料理店。 「土御門ちゃん、お金は間に合うんですか?」 小萌先生も心配になる様な佇まいの店だった。 「それも問題ないにゃー、ちゃんと料金面はピンきりで予約できてるぜい」 まあ、後で皆に明細書出すから確認してくれた方が早いぜよ、そう言って土御門は黙る。 {なあ、カミやん……} {どうした青ピ} 土御門が話している最中に青髪ピアスがこっそりと話しかけてきた。 {黄泉川先生の着てる水着きわど過ぎやあらへんか?} その一言で上条はチラッと見てしまった。 {ああ、やばい……というかあんなん着るような先生だったか?} {それは多分、無頓着に選んだんじゃないかにゃー} いつの間にか土御門も戻ってきていた。 {それよりカミやんはこの話題に入ってない方がいいぜよ、このままだと危険すぎるにゃー} {ああ、わかった} そう言って上条はその輪から外れる。 どうやらこの二人は寮監や小萌先生、吹寄の水着を見て意見を言い合っているようだ。 「俺一人で時間を潰すのも無理があるだろ……」 そう上条は言うしかなかった……が {上条、ちょっといいか?} 寮監に呼ばれた。 そして、寮監の傍に行くと小声で問われた。 {あの打ち止めと言われた少女と妹さんと言われていたのは御坂の家族か?} 流石に美琴を預かっている身の寮監は鋭い。ここは隠しておくのは得策ではないと正直に答える。 {……ハイ} {ワケありか?} {……ハイ、ですが美琴の奴も本当の家族のように思ってます} {わかった、理由は聞かないでいてやる……で、それを知っているのはお前だけか?} {ここにいるメンバーだと…俺と美琴、一方通行と打ち止め、御坂妹だけです} {そうか……わかった} それっきり寮監は喋らなくなるが…… 「ふぅ、わかった……上条、御坂を頼むぞ」 「はい」 そうして上条は寮監の隣で待つことになる。 {カミやんの奴、なに話してるんやろ?} 多分、妹達がらみのことだろうな……まあ、寮監は大丈夫だろう、あまり詳しくは聞いてこないだろうからな。 {彼女の事で尋問されてるんじゃないかにゃー? 多分近づけば巻き添いくらうかもしれないぜい} 土御門は青髪ピアスに悟られない為にあえて近づかない様に言う。 {それは嫌やなー、触るな危険ってやつやな} うまくいった様だ。 回避もうまくいった事で、今度は一般のお客の水着を品評する二人であった。 それから結標と白井。初春と御坂妹と舞夏。一方通行と佐天が来て。最後に打ち止めと美琴がやってきた。 全員揃ったことを確認し、昼食をしに向う。 土御門は舞夏と、大人は三人一緒に中に入っていく。 一方通行は佐天と打ち止めと、初春は御坂妹と、結標は白井と… 吹寄と姫神は青髪ピアスを引きずって中に入って行き……上条と美琴が取り残される。 「あの、さ……」 「なによ……」 いつもと同じ二人なのに肌を露出しているというだけで緊張してしまう。 「その水着、似合ってると思うぞ……その、なんだ…ちょっといつもよりも大人っぽくてさ」 緊張からか歯切れの悪い上条。 「え、えっと……ありがと」 美琴は素直に言ってみたものの…… 「ねえ……そんなにいつもの私って子供っぽい?」 当然の疑問に少し悲しくなったりする。 「あ、いや…そういうんじゃなくてだな……想像してたのより少し大胆な水着だったというか……なんというか」 視線を合わせてくれない上条を見て、恥ずかしがってる当麻って少し可愛いかも、と思ったりしていた。 「それじゃ、さっさと入ろうぜ…皆待ってるだろうしな」 そう言って上条は美琴の手を引いて店に入って行った。 □ □ □ 昼食は騒ぎ、はしゃぎ、大いに盛り上がった。 そして、食後……皆それぞれ別れて楽しむことになる。 「それじゃ、帰る時にまたアナウンスを流してもらうからにゃー、しっかりと聞いとくんだぜい?」 土御門が店の前でそう言って散り散りになる。 白井と佐天、初春と御坂妹に美琴と上条で一組。 黄泉川に小萌、寮監と舞夏で二組目。 土御門と結標、一方通行に打ち止めで三組目。 青髪ピアスに姫神、吹寄で四組目。 こんなメンバーに別れて何が起きるといえば……平穏なもの以外のなにかだろう。 それから数時間後……… 「ハァ……なんで俺はこんなことやってんだよ」 上条は一人で6人前の飲み物を買いに行かされていた。 そう、それは数分前。 「だぁっ!!!」 不幸にもプールサイドで足を滑らせた上条は、御坂妹と白井を押し倒した。 結果…… 「あ~ん~た~は~、妹に何してくれてんのよっ!!!!」 美琴はそう言い、御坂妹を引っ張り上げ、上条に電撃をお見舞いした。 幸いにも被害者は2名。その他の被害者は無しであった。 「お、お姉様……私の事は心配してくださいませんのね……」 半泣きでビリビリと痺れる後輩に、美琴は平謝りをする事になった。 上条は打ち消して実はなんともないでいるが……言ったが最後、どうなるか保障されない。 「あの、美琴様……ジュースでもいかがでしょうか?」 笑顔と言う仮面をつけ、今をしのごうとする上条。 「あ、なら私のもお願いしますね上条さん…コカゴーヤです」 「佐天さん、ずるいです…私のもお願いします上条さん…えーと、私も佐天さんと同じ物を」 「それなら、とミサカもあなたに同じ飲み物をお願いしてみます」 ………どうやら上条さんのお財布が軽くなるようです。 「それじゃ、私は黒子の分とふたつ、ヤシの実サイダーお願いね」 「はい……」 という具合だったわけだ……不幸だ。 そうしてドリンクや焼きそばを売っているような店に来て…… 「「いらっしゃいませ、なにになさいますか?」」 どうやら二つあるうちのカウンターに、同時に並んだ奴がいるようだ。店員の声がかぶった。 「「それじゃ……」」 今度は客の声がかぶった。 「ヤシの実サイダーを3つとコカゴーヤを3つ」 「ヤシの実サイダーと黒豆サイダー、あとコカゴーヤを1つずつ」 「「かしこまりました、それでは少々お待ち下さい」」 注文も終えた所で店員が持ち場を離れて飲み物を作りに行った。 「「ハァ…なんで女の子のパシリやってんだ……不幸だ」」 隣の客と同時にまた同じ事を言った……気になって隣を見る。 「「………………」」 その客も気になってこっちを見ていた。 あれ? どっかで見たような気がするんだが……気の所為か? と首を傾げる上条。 こいつってあの時、俺をぶん殴ってあの言葉を言った無能力者だよな……? 「あの……どこかで会いませんでしたか? 俺達」 「え、あ……うーん」 上条がいきなり声をかけた所為か相手の客は少し慌てている。 「ある……と言っていいのか、ないと言っていいのか……」 「ん? どっちなんですか?」 曖昧な回答をする客に上条は不思議な顔をする。 「お待たせしましたー」 その客に注文の品が届き…… 「それじゃ、お先に」 そう言って、客は慌てて走り去って行ってしまった。 「なんだったんだ?」 「お客様、お待たせしました」 「あ、はい」 こっちも来たので、御代を払って美琴たちの元に戻ることにした。 途中、自分の飲み物を土御門に奪われるまでその客の事を思い出そうとしたが、さっぱり忘れてしまうのであった。 一方、逃げた方は…… 「はぁ、はぁ、はぁ…もしバレたらまた殴られんのか? 俺って」 最後に考えていたことはそれだった。 「はまづら、そんなに息を切らしてどうしたの? 」 「超遅いですよ浜面、それに言っている意味が超不明です」 そう声をかけてきたのは、自分に飲み物かって来いと命令した絹旗と、心配をしている滝壷だ。 「わかんなくていいぞ、それに……いや、なんでもない」 「「?」」 頭を傾げる二人、まあ、今はそれでいいかと浜面は思う。 説明するのもめんどくさいしな。 □ □ □ そしてグループの面々は…… 「で? なんで私はあなた達と一緒に行動しないといけないわけ?」 「知らず知らずにこうなってたんだにゃー」 「………………」 不満大有りの結標に、のんびりとしている土御門。 目を閉じ、二人の声にイライラしている一方通行。そして…… 「プールっていいねー、ってミサカはミサカは大はしゃぎっ!」 バシャシャシャシャ、とバタ足で一方通行に水をかける打ち止め。 「あら? ずいぶんと懐かれてるのね……ほんとにロリコンだったのね」 「まあ、それは否定できないんじゃないかにゃー」 さらにイライラし始める一方通行。 「それに……さっきから、結標も小さな男の子が近くを通るたびに目で追ってるみたいだけどにゃー」 ぶっ!と飲んでいたスポーツドリンクを噴出す結標。 「ちょ、あ、ああああああなたに言われたくないわよっ! さっきの昼食中に妹にあーんってねだってる、どっか頭が湧いてる奴に言われたくないわよっ!!!」 そして叫ぶ。 「まあ、俺様は自分がそうしたいから、そうしてるだけだからにゃー……否定はしないぜい?」 不敵に笑う土御門。 「…………」 呆れて物も言えなくなる結標。 すると……打ち止めよりも少し大きい少年が打ち止めの近くにやって来て…… 「君……名前はなんていうの?」 ナンパし始めた。 {ちょ、これはすごく面白い展開じゃない?} 結標は土御門に近寄り、耳打ちする。 {そうだにゃー、一方通行はどういう反応をするのか楽しみぜよ} そして、二人で一方通行を見る……が姿が見当たらない。 {{どこいった……あのロリコンモヤシ}} 見当たらないので打ち止めに視線を戻すと…… ガクガク、プルプル、と怯えているナンパ少年がプールで泣いていた。 「「予想通りの行動(だにゃー)」」 実は少々誤解が生じるかもしれないので説明しておこう。 少年がナンパし始め、結標と土御門が打ち止めから目を逸らした瞬間…… バッと一方通行は打ち止めをすくい上げ、肩車して少年に尋ねた。 「ガキ……ナンパするのはいいけどよォ、一生テメェの命張って守る覚悟があるなら交際を認めてやる」 「ハァ? なに言ってんのアンタ?」 「ハァ……、どうしようもねェ、ヤロォだなァおい」 「つーか、アンタだれよ? その子のお兄さんかなんか? 恋人ってわけじゃなさそうだし、つか恋人だったら引くわ」 ギャハハハと笑う少年。次の瞬間、一方通行はその少年の近くに音も無く移動し、耳元で…… {恋人じゃねェ、保護者だァ……あと言っとくがよォ、好き奴でもねェのに口説くたァ舐めた真似してるじゃねェの……次そんな事してるとこ見たら解体してやっからよォ……覚悟しとけェ、いいなァ?} ピッっと最後にプールの飛沫を飛ばし、少年の頬を薄く切り裂き、脅す。 そうして水の上を静かに駆けて場を退散するのであった。 そして、残されたのは一生ナンパのできない身体になった少年と土御門と結標。 「あのロリコンが去って、シスコン猫語男と二人きりって最悪の展開じゃないかしら」 「こっちはショタコン露出女と一緒なんてにゃー、もう少し恥じらいを持って欲しいぜよ」 「ちょっ! 今日来てたメンバーの中では結構露出少ないわよっ!」 「いつもがいつもだからにゃー」ガクガク 首を絞められガクガクと揺すられる土御門。 あ、すこし結標の胸が当たってるにゃー、幸せ? うーん、微妙なんだにゃー 別の思考をしている土御門だが結標は気付かない。 「まあ、それ以上言うなら大恥かかせてやるから覚悟しておきなさい」 「まったく、わかったぜよ」 少しだけ離れた結標に、あれ? すこし残念な自分がいるにゃーと思う土御門だった。 それから、上条が飲み物を買いに行っているのを見て土御門は 「ちょっと、トイレ行ってくるにゃー」 と言って去ってしまい。 「私も白井さんでも探そうかしら?」 と結標もプールサイドから腰を上げてどこかに向うのであった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/鶴の恩返し
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1960.html
18スレ目ログ ____ ________________ 18-10 夢旅人(15-189) ミサカネットワーク上のアリア ~Aria_ on_ MISAKA-NETWORK 18-29 くまのこ(17-598) もし学園都市最強の電撃使いが初めからデレていたら 18-77 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 5 第5話『プレゼントタイム』 18-106 くまのこ(17-598) とある不幸な都市伝説 7 3日目 中編 18-110 くまのこ(17-598) 小ネタ 未来的日本昔話 「ビリビリ」 18-127 たくみ(18-126) 何かのプロローグ 1 18-137 たくみ(18-126) 何かのプロローグ 2 18-156 ひろたか(18-154) 八月の詩 1 18-166 ひろたか(18-154) 八月の詩 2 18-173 月見里(12-676) 洒涙雨 1 ―前編― 18-192 夢旅人(15-189) 灯籠流し ~Love_comes_quickly 1 前編 18-201 くまのこ(17-598) もし常盤台の超電磁砲が初めからデレていたら 18-206 ひろたか(18-154) 八月の詩 3 18-214 かぺら(5-906) 夏休みの終わりには 18-231 つばさ(4-151) 素敵な恋のかなえかた 13 恋、はじまる 18-242 17-491 上条さんを悩ませたかったんです ガールズサイド(ほとんど美琴) 18-260 夢旅人(15-189) 灯籠流し ~Love_comes_quickly 2 後編 18-279 月見里(12-676) 洒涙雨 2 ―中編― 18-292 つばさ(4-151) 素敵な恋のかなえかた 14 恋、はじまる 18-303 くまのこ(17-598) もし最強無敵の電撃姫が初めからデレていたら 18-312 つばさ(4-151) 素敵な恋のかなえかた 15 恋、はじまる 18-325 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 6 第6話『ウソとホント』 18-331 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 6 第6話『ウソとホント』 18-343 くまのこ(17-598) とある不幸な都市伝説 8 3日目 後編 18-350 月見里(12-676) 洒涙雨 3 ―後編― 18-367 つばさ(4-151) 素敵な恋のかなえかた 16 恋、はじまる 18-389 くまのこ(17-598) もし32万8571分の1の天才が初めからデレていたら 18-397 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 7 第7話『壮絶なるビンゴ大戦』 18-402 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 7 第7話『壮絶なるビンゴ大戦』 18-417 つばさ(4-151) 素敵な恋のかなえかた 17 恋、はじまる 18-431 夢旅人(15-189) とある男女の恋愛生活 6 Always_On_My_Mind 18-441 またーり三世(18-440) 美琴 「黒子聞いて、新しい能力を開発したわ」 18-452 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 8 第8話『壮大なるビンゴ大戦』 18-466 くまのこ(17-598) 酔い上さんは絡み酒 18-475 くまのこ(17-598) 酔い琴さんは泣き上戸 18-483 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 9 第8話『壮大なるビンゴ大戦』 18-494 夢旅人(15-189) とある男女の恋愛生活 7 Always_On_My_Mind 18-510 くまのこ(17-598) とある不幸な都市伝説 9 4日目 上条編 18-519 D2 ◆6Rr9SkbdCs 小ネタ ぴろーとーく 18-529 久志(18-529) 小ネタ 着うた 18-540 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 10 第9話『走れ、上条』 18-554 くまのこ(17-598) 3人のゲテモノメイドと+α ですの 18-562 ぐちゅ玉(1-337) よんでますよ、カミジョーさん。 1 18-569 ぐちゅ玉(1-337) よんでますよ、カミジョーさん。 2 18-586 い~む(16-135) 未来からの来訪者 13 ~5th day まこみことうま~ 18-605 くまのこ(17-598) もし御坂家の御令嬢が初めからデレていたら 18-608 くまのこ(17-598) 小ネタ 上と琴でイチャイチャさせてみた 18-651 琴子(4-448) 小ネタ 上条さんと家庭教師(美琴さん) 18-659 夢旅人(15-189) Just_Married ~私たち結婚しました 18-702 くー(18-699) どっちも負けず嫌い 1 18-715 月見里(12-676) ふたり 18-739 くー(18-699) どっちも負けず嫌い 2 18-754 アクセ(18-753) 二人の鈍感 18-766 17-491 友達ルート? 1 18-783 蒼(4-816) Presented to you 9 ―beginning・一二月三日②― 18-793 夢旅人(15-189) 愛してると言って ~Say_You_Love_Me 18-817 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 11 最終話『すべての真相』 18-829 琴子(4-448) とある10人のハロウィンパーティ 1 Let s_do_something! 18-842 夢旅人(15-189) その香りは誰がための 18-858 久志(18-529) 小ネタ 上琴ドッキリマル秘報告 18-871 くまのこ(17-598) 集結!御坂DNA だとよォ 18-893 18-892 小ネタ 正夢? 18-933 くー(18-699) どっちも負けず嫌い 3 18-940 mm(18-939) 上琴の勉強会 18-956 くまのこ(17-598) いちゃいちゃって難しい 18-975 O.T.(18-974) この半径30cmの中で Way_to_Answer. ▲
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2351.html
全国一斉上琴テスト はーい! 用紙は後ろの席の人に回してくださいねー!まだ表側を捲っちゃダメですよー。テスト開始はチャイムが鳴ったらですからね。えー、今回のテストは、直接成績に響くことはありません。あくまでも 「上琴」 がどこまで世に浸透しているか、その調査のためなのです。ですが、あまりに点数が悪かった人には補習が待ってますので注意してくださいね。はいはい、ブーブー言わない。それではチャイムも鳴ったところで、テスト開始!なのです。Ⅰ 基本Ⅰ‐① 上琴とはなんですか? (5点)佐天ちゃんの回答 「二人がいちゃいちゃしてることですね!」はい、その通りですね。海原ちゃんの回答 「御坂美琴さんと上条当麻さんによる…ゴフッ! カップリングの名称ですね。 二次創作の世界でも人気のカップ…ガハッ! リングであり、 とりわけ、溝口ケージ氏の『いちゃいちゃレールガン』…グバッ! シリーズや、 七積ろんち氏の…ブフォッ! 『御坂美琴の失恋』などが有名です。…ボグファ!!!」ステマ込みの完璧な回答…なのですが、血を吐くほど辛いのなら無回答でもよかったのですよ?初春ちゃんの回答 「上イン、通行止め、浜滝、数テレ(木原数多×テレスティーナ)と人気を五分する有名なカプですね。 ちなみに私のオススメは土上なんですが、最近は上一もアリかなって思ってます。 (ただし上条さんはヘタレ攻め限定)」腐女子【ホモ好き】は帰りやがれなのです……いやちょっと待って!? 数テレって何ですかその斬新すぎるカップリング!?Ⅰ‐② 上琴病とはなんですか? (5点)ミサカちゃん(Sサイズ)の回答 「あの人とお姉様のカップリングを愛するあまり、パーソナルリアリティに影響が出ること! ってミサカはミサカはニコニコ大百科で得た知識をひけらかしてみる!」はい、正解です。冥土帰し先生の回答 「恋の病というヤツだね? こればっかりは医者でも治せないね?」不治の病、ということですね。木原(数)先生の回答 「要はアレだろ? ガキ共が乳繰り合ってんのを見て喜ぶ変態って意味だよなぁ!!」う、う~ん……まぁ、そうと言えなくも…いやでも……う~ん……… Ⅰ‐③ 上条ちゃんの口癖は? (2点)土御門(元)ちゃんの回答 「その幻想をぶち殺すぜい!」自分の口癖もうつっちゃってますが…まぁ正解ですね。垣根ちゃんの回答 「俺の『幻想殺し』に、その異能は通用しねえ」……ちょっと自分の口癖がうつりすぎちゃってますね。一方通行ちゃんの回答 「『まずはそのふざけた幻想をぶち殺す』『不幸だァァァ』『心に、じゃないですか』『自分のためだろ』 『それでも、お前があいつの友達だってのには変わりないだろ』 『アイツがこれからもずっと悪くあり続けなきゃいけないなんてルールは ――― 』」 (長いので以下割愛)何か怖い! 何でそんなに上条ちゃんに詳しいんですか! どんだけファンなんですか!!Ⅰ‐④ 御坂ちゃんの好きなモノは? (2点)ミサカちゃん(Mサイズ)の回答 「ゲコ太というカエルのキャラクターです、とミサカは回答します」正解です。ちなみに、パチ商品の「どっせいゲコ太郎」には要注意なのですよ。木原(円)ちゃんの回答 「うん、うん。分かってるよ涙子ちゃん。ここは『上条さん』って答えるのが本当の正解なんだよね」確かにそれは模範解答ですが……カンニングはしちゃいけないのですよ………白井ちゃんの回答 「ワタクシ!!!」寝言は寝てから言いましょう。Ⅰ‐⑤ 二人のニヤニヤエピソードを3つ答えてください。 (各2点)雲川(芹)ちゃんの回答 「偽デート、フォークダンス、罰ゲームだけど。 ちなみに、情報源についでは企業秘密だけど」雲川ちゃんはミステリアスなのです。五和ちゃんの回答 「おしぼりを渡しました。お料理も作りました。 い、一緒にレジャーお風呂にも行ったことあるんですから!!」それは、あなたと上条ちゃんのエピソードじゃ……オリアナさんの回答 「街中や川原、それから橋の上でも激しくしちゃったんでしょ? まぁ、他の人の視線があった方が興奮するものね。お姉さんも嫌いじゃないわ」いやいやいや!! あ、あなたが言うと全く違う意味になっちゃいますから!!!/// Ⅱ 歴史Ⅱ‐① 二人が出会ったきっかけを答えてください。 (3点)浜面ちゃんの回答 「大将のことだから、彼女が誰かに襲われてるのを助けたってとこじゃねーの?」ちょっと違いますが…おまけで ○ にしておきましょう。ミサカちゃん(Lサイズ)の回答 「ナンパでもされたんじゃない?」上条ちゃんの性格からして、それはないのですよ。吹寄ちゃんの回答 「上条のいつもの手口ですね!」手口……う~ん、まぁ……Ⅱ‐② 上条ちゃんが入院している時、御坂ちゃんは手作りの何をプレゼントしようとしたでしょう? (3点)姫神ちゃんの回答 「お弁当。手作りと言えば。やっぱりこれ」惜しい! 惜しいですよ~。オルソラちゃんの回答 「その幻想を、お殺しになるのでございます」……それは4問前の回答なのです………マリアンちゃんの回答 「生きてるテーブル」怖えぇよ!!!Ⅱ‐③ 8月31日に二人が食べたのは、2000円の何でしょう? (3点)シスターちゃんの回答 「ジャンボ地獄チャーハンかも!!」それは結局食べてないのですよ。麦野ちゃんの回答 「シャケ弁」…自分が今、食べたいモノではなくてですね……フレンダちゃんの回答 「結局サバ缶が最強って訳よ!」いや…だから………Ⅱ‐④ 大覇星祭の借り物競争で、御坂ちゃんが引いた指令書には何と書かれていたでしょう? (3点)土御門(舞)ちゃんの回答 「第一種目で競技を行った高等学生だぞー」その通りですね。正解なのです。神裂ちゃん(さん?)の回答 「恩…でしょうか」…確かにそれは返さなくちゃいけないモノですが……それが紙に書かれていても困りますよね……オーレイさんの回答 「お金。利子は勿論、十日で一割ね」爽やかな学園行事で、何ちゅうモン貸し借りさせようとしてんですか。Ⅱ‐⑤ 御坂ちゃんがハワイで買った物は、キューピッドアロー社製の何でしょう? (3点)黒夜ちゃんの回答 「あぁ~何だっけ!? ここまで出掛かってんだけど……なんとかリング……イカリングだっけ!?」そんなモン、近所のスーパーで買ってください。ウィリアムさんの回答 「学生の身分でエンゲージリングなど気が早いにも程があるである。 最近の若者は早熟と言われているであるが、そもそも性の乱れが ――― 」 (長いので以下割愛)堅い堅い!! 正論ではありますが正解ではないですよ! あと、エンゲージリングでもないですからね!?ショチトルちゃんの回答 「原典」買えるの!!?Ⅱ‐⑥ 0930事件を、「罰ゲーム」、「ツーショット」、「ゲコ太」の3つのキーワードを使って説明してください。 (5点)雲川(鞠)ちゃんの回答 「罰ゲームの名目で、上条当麻をデートに誘った御坂美琴。 カップル限定のゲコ太ストラップを入手するために、ツーショット写真を撮ることにも成功した。 自分のプライドを傷つけずに目的を達成する、見事な作戦と言えるな」大正解なのです! 雲川ちゃんもお見事ですよー。ヴェントちゃんの回答 「上条当麻殺害の名目で、学園都市に乗り込んだ私。 学園都市を制圧するために、敵意で満たし天罰術式も成功した。 最終的にはローマ正教と学園都市を対立させ第三次世界大戦のきっかけを作った、 見事な作戦と言えるわね」…それ、ガチな方の0930事件じゃないですか………キーワード1つも使ってないし………削板ちゃんの回答 「男は最後の力を振り絞り、気合と根性のツーショット弾を炸裂させ、 見事、怪物ゲコ太郎を粉砕したのだった!! ゲコ太郎 『バ…バカな……この俺が…貴様ごときに……ぐふっ………』 男 『あばよ…あの世で罰ゲームでも受けるんだな……』」………もう、回答が異次元すぎて、どうツッコめばいいかも分からないのですよ……… Ⅲ 創作 次の二人の会話にセリフを入れて、台本形式のSSを完成させてください。 (30点)上条 「おーい美琴! ちょっとこの後 ( A ) ?」美琴 「えっ…いいけど、珍しいわね。アンタが ( B ) なんて」上条 「まぁ、今日は ( C ) だからな! たまにはこんなこともありますよ」美琴 「じゃあ ( D ) してくるから、ちょっと待ってて」上条 「わざわざ ( E ) するのか?」美琴 「 ( F ) ! ( G ) なんだから!!」上条 「…… ( H ) 。 そのかわり ( I ) ?」美琴 「 ( J ) !?」上条 「 ( K ) 」絹旗ちゃんの回答 「A:超映画を観に行きませんか B:B級ホラーに興味持つ C:半額デー D:超制服に着替え E:そのために帰宅 F:そうですよ G:学生割ならさらにお安くなって超お得 H:仕方ないですね。超待っててあげます I:ジュース奢ってくれますか J:何でですか K:高校生は中学生より、割引額が超少ないのです」ちょっといちゃいちゃ度が少ないので、23点ってところですかね。泡浮ちゃんの回答 「A:乗馬でも如何ですか B:お誘いになられる C:とても良いお天気 D:お弁当を用意 E:御坂様が直々にお作り F:勿論ですわ G:折角のおデートですもの。女性は愛する殿方のためなら、どんな事でもしたくなるもの H:御坂様からそんなに想われているなんて、とても光栄ですね I:僕からも一言だけ宜しいですか J:何でしょう K:僕も御坂さんの事を愛しています」若干二人の設定に違和感は残りますが…いちゃいちゃいていたのでいいでしょう! 30点満点なのです!リドヴィアさんの回答 「A:十字教に入れてくれませんか B:科学という異教を捨てる覚悟ができたのですね。素晴らしいことです C:私は目が覚めましたので D:洗礼の準備をいたしましょう E:私などのために聖水を用意してくださるので? F:勿論ですので G:例え元異教徒であっても、哀れな子羊には変わりありません。神は全てにおいて平等ですので H:あぁ…生きていて良かった I:これで私も救われるのですね J:貴方も是非! K:十字教へ!」はい、0点です。 会話も繋がってないし。Ⅳ 考察Ⅳ‐① 二人が今一つうまくいかないのは何故でしょう? (15点)建宮さんの回答 「そりゃもう、上条当麻が鈍すぎるのが悪いのよ! ヤツには少し乙女心ってモンを勉強してほしいのよな!」まさしくその通り!木山先生の回答 「主に彼女の性格に問題があるのではないかな。まずはツン…ツン……ツンドラ?を治すべきだろうね」そうですね。 でもツンドラではないのですよ。フィアンマさんの回答 「全てこの世界が悪いのさ。だから俺様が救ってやるよ」いやいやいや!! また戦争ふっかける気ですか貴方はっ!!!Ⅳ‐② ではどうすれば二人の距離が縮まるか、考えてください。 (15点)テッラさんの回答 「ツンを下位に、デレを上位に」そうですね。御坂ちゃんが素直にならないとですね。木原(病)先生の回答 「諦めればいいのです」よくねーです。結標ちゃんの回答 「彼があと、5~6年若返ればいいと思う」それは結標ちゃんの願望なのです。女性がみんなショタ好きだと思ったら大間違いですよー?……ま、まぁ先生も若い子は嫌いではありませんが……… はい! 終~了~。最後に点数の高かった人の上位グループと、低かった人の下位グループを発表して終わろうと思います。高かった人は鼻高々に、低かった人はよ~く反省してくださいね。よろしいですか? まずはよく頑張りました!ベスト5です。 一位 一方通行 101点 (問Ⅰ‐③の回答が詳しく書かれていたため、特別に+1点) 二位 海原光貴 98点 (テスト中に吐血した量0.4ℓ) 三位 ミサカ10032号 95点 三位 ミサカ10033号 95点 三位 ミサカ10034号 95点 (以下、ミサカ20000号まで全員95点)やっぱり二人に近い人が高得点を出したみたいですね。それと海原ちゃんは、この後ちゃんと病院に行くのですよ?さてさてお次は、残念でした!ワースト5なのです。(下から数えて) 五位 削板軍覇 7点 一位 青髪ピアス 0点 (小萌の補習を受けたいので白紙) 一位 木原円周 0点 (カンニングが発覚したため) 一位 御坂美琴 0点 (一問目から 「ふにゃー」 したため白紙) 一位 上条当麻 0点 (ナチュラルに全問不正解)はい! というわけで、上琴テストはここまでなのですよ。みんなは何点取れましたか? 勿論100点ですよね!それでは! またいつかお会いしましょうなのです~。あ、それと上条ちゃんには大事な話があるので、後で職員室に来るように。 お ま け ヽ、 、 、 、 \ ヽ { ヽ、 \ ヽ ヽ ヽ 、 ‐- 、ヽ \ \ ヽヽ \\ヽ \\ `゙ ミ ヽ \ \ \ \ ヽ \ lヽ、 __>ミ \ ヽ ヽ ヽ ヽ ! ハヽ― = 二 \ \ l } |、 >--== ミ 、`ヽ ヽ、\ ! // / ト、_ ̄>三二 ミ、 ,、ゝ‐- 、 |r-、/ / | 二` ミ- _ ヽ/ - 、 ` ヽ / // }/ ―= ニ ― ニ .〉,ィ‐- 、__,〉 _,, 〉 ///-. 、. _ 優 ‐ '" ヽ三 _ /〈 弋エヽ ヽ /ィェュ}.|//// `゛ ' -. .,, 先 \ミ.二 _彡, -、} /´' } l`ヽ 〉 // .`ヽ す ヽ-=ニ__ '" { ヾ `ヽ ィ ヘ / 〉彡' / | る。 `メ‐ '' ~ ヽ、lイ } _,z孑于テミx、Yr'´ ./ | .ノ//ィ _ヽ! 弋二二二二{/ _ >'" |  ̄ ` ― l\  ̄  ̄  ̄ { > ''" | ̄ " ' ― _ _ | `> -- ‐ '"_ ― ''"´ ツ \ 二 二 二 二 / ン __ _ . . -‐''" ` ‐--.、 デ を. /´ 、 ~ ‐ _ ./\ `‐-、 レ 下 / 、 ヽ \ ヽ \ 〉 } 〉 を 位./ \ ヽ ヽ .〉{ l / ヽ、 上 に、' ∧ ̄ > ''‐._ ./ ヽ―‐''" \― !/ ∧ 位 l ∠二 _ ,.x-‐‐ 、 / ̄ \__\.| / ∧ に / | | } | | }/ / | \ /. \ >. /i /. 丶、 ,... ´ /. / | ハ / ! /. >  ̄ ̄/. /l/ >| / | iハ i / j/ハ /! < ち /. .イ / でうラ'ヘ`} ト ∧ l /厶イ´. ∨ | \ー―一 ょ ー‐ァ. { 厶イ ハ/ `ニ ノ. jノ. 八/. 'でうラヽ/. | \ っ /___ ∧ (|/ 〈 //. ー一'. j/! \ ̄ 何 と /. ハ ∧ \ / { / ̄ ̄\ / } 「 ̄ 言 ∠ 八 . \ / } j\ /. / ∧ハ| 分 っ 厶イ ーヘ ´/ノ. \_/. /イ } か て ノイ /i ハ { ∧丿 ん ん |/ | |\ , -‐=' 、 / な の x≦ハ| \ ー‐. / い か / ∨//| \ `7. .イ\ っ / ∨/j \ \ ; . .< '///\ ス / ∨′ \  ̄ '/////⌒ヽ、 / >x .、 \ {'/////////\
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2127.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸な都市伝説 5日目 後編 この世は何が起こるか分からない。 人生の転機とは唐突にやってくるものだ。 とある不幸な少年は、魔道書を記憶しているという少女を助けた事で、科学と魔術の抗争に巻き込まれていく事になった。 最強を求めた少年は、今まで殺してきた人形と瓜二つな少女を助けた事で、学園都市の更なる闇へと堕ちていく事になった。 チンピラだった少年は、たった一人の愛する少女を助けた事で、学園都市を敵に回す事になった。 突然死神のノートを拾う事もあるかもしれない。組織の新薬の実験台にされ、子供になる事もあるだろう。 実家の蔵の地下に、大妖怪とそれを滅する槍が封印されている事だって、十分にありえるのだ。 だから驚くべきことじゃない。 「昨日までそんな素振りを全く見せなかった男から、突然告白される」なんてことは。 たとえそれが意中の相手だったとしても。 その二人が唐突に恋人同士になったとしても、別に驚くことではない。きっとよくあることなのだ。 そんなよくある二人の上条と御坂。 たった今恋人となった二人は、同じベンチに座っている。ただそこには、大分距離がある。 まぁ確かに告白直後だ。気まずいのも無理はないだろう。 そんな二人はそれぞれ思いにふけているようだ。これからのことを考えているのだろう。 (どどどどうしよう!!! すごくうれしいけどアイツの顔まともに見れない~~~!!! こんな時はどうすればいいんだっけ!? えっとえっとたしか、相手の顔に「人」って書いてカボチャを三回飲み込めばいいんだっけ!? あ~も~!! 全然頭が回らない~~~!!!) みさかは こんらんしている! わけも わからず じぶんを こうげきした! 少々テンパリすぎな感はあるが、御坂の反応は分かる。 問題は上条だ。 「ついに ねんがんのカノジョを てにいれたぞ!」なはずなのに、何だか浮かない顔をしている。 彼は御坂とは全く違う事を思っているようだ。 彼氏彼女の事情は違うのかもしれない。 (恋人役はこれでいいとしても、これからどうするかだな…… とりあえずその場しのぎにはなるが、根本的な解決にはなっちゃいねぇ。 かと言って、動きようにも情報が少なすぎる。 手がかりといえば、精神系の魔術師か能力者。一度に大勢を操れる。……それくらいか。 しかも目的が全く読めないのも厄介だよな。 女の子を使って俺に告白させて何のつもりだ?俺の純情弄ぶやん? せめて魔術に詳しい味方がいればいいんだが…… あ~くそ! 土御門がやられてなきゃな~!!) 君は一体何を言うとるのかね。 彼は架空の敵を勝手に作り、勝手にピンチに陥っている。 つーか純情弄んでんのはお前なんだが。 「おーいたいた! 久しぶりなのよ上条当麻! ……ってそれほどでもないか」 迷走中の上条のもとに、ある男が話しかけてきた。 その光沢のあるクワガタのような特徴的な髪型の男は、 「た、建宮!? 何で学園都市【ここ】に!?」 「まぁちょっと野暮用なのよな。」 そう言いながら、建宮は御坂の方をチラリと見る。 (んー…この子が上条当麻のことを好きなのは間違いなさそうなのよ。 けどこれくらいなら、女教皇様と五和にもまだまだチャンスがあると見た!! お嬢ちゃんには悪いが、恋ってのは奪ってナンボの世界なのよ!!) なにやら燃えている建宮。 お願いだから、これ以上事態をややこしくしないでくれないか。 「野暮用って?」 「あー…実はアレなのよ。みんなしてお前さんに会いに来たんで、俺はその付き添いみたいなものなのよ。」 みんな、というワードに上条は嫌な予感がした。 「誰が来てんの……?」 「女教皇様に五和。それにオルソラ嬢、シェリー、アニェーゼ、レッサー。あとはステイルなのよ。」 言いながら建宮はケータイを取り出した。 「もしもしステイルか? ああ、上条当麻を発見したのよ。 そうそう……えっ?違う違う。 その猫地蔵の呪いにかかったって人は別人なのよ。 うんそう、似てるだけ。」 どんな会話してんだよ、と思いながらも、上条は益々嫌な予感を募らせる。 (まさか、神裂達まで!? 学園都市の中だけの問題じゃねぇのか!?) 事態はさらに深刻化する。主に上条の頭の中で。 すると反対側から、ちょいちょいと右腕の袖を引っ張られた。 「どうかしたのか?美琴。」 「ぅえっ!? あ、い、いや、その…誰なのかなって……」 やはりまだ会話がぎこちない。 ただし、ぎこちないのは御坂側だけで、告白した張本人は実にあっけらかんとしている。 「そう言えば美琴は会ったことなかったな。 アイツは建宮斎字っつって、まぁ、あっち側の人間だ。」 「…あっちって……魔術師ってこと…?」 「まぁな。けど仲間だから大丈夫。いいヤツだから安心しろって。」 「そう……」 御坂は魔術師に対して、あまりいいイメージを持っていない。 初めて触れた魔術が、「ガラスの靴」や「森の住人」だったのだから無理もないが。 これがもし「竜破斬【ドラグ・スレイブ】」や「光の白刃」だったら、また違った印象を受けたかもしれない。 いや、どちらにせよ、いい印象は受けないか。 「もうすぐ来るみたいなのよ。」 電話をし終わった建宮は、自販機に寄りかかりながら話しかけた。 (さて、みんなが来る前に、ある程度情報を引き出しとくとするか。) 尋問開始。 「まず聞きたいんだが、二人は付き合ってるのか?」 その質問に御坂はビクンと跳ね上がるが、上条は冷静に答えた。 「……何でそんなこと聞くんだ?」 「ただの興味……と言いたいが、こっちにも事情があるのよ。」 事情。その言葉に、上条は「やはりか」と先程の嫌な予感を確信へと変える。 「待て建宮。 そのことは全員揃ってから説明しよう。 ステイルも来てるんだろ? アイツにも協力してもらいたい。」 「………?」 上条の目は真剣だった。 建宮はこの目を何度か見ている。 法の書を巡る事件の時、アドリア海の女王に乗り込む時、そして後方のアックアと戦った時。 上条はいつも、何か大切なものを守る時にこの目をしていたのだ。 冷やかしに来た建宮だったが、その目を見て何かを感じ取り、仲間達の到着を黙って待つことにした。 (まさか、学園都市で何か起きているのか? だとしたらこんなことしている場合じゃないのよ……) こうしてまた、めんどくさい誤解が広がっていくのであった。 しばらくしてステイルらと合流した上条と御坂は、今はそれぞれ男子チームと女子チームに別れている。 「精神操作か……随分と厄介だね。」 「本当に右手は反応したのよな?」 ステイルと建宮は、神裂達が操られていないことを知っている。 上条の教室で起こった事だけを聞けば、神裂達同様、御坂への嫉妬心から起こした行動であろうことは予測できる。 しかし、それでは絹旗に幻想殺しが発動したことが説明できない。 やはり何か事件がおきている事は間違いなさそうだ。 全く、食蜂さんが余計なことをしなければ…… 「ああ、間違いねぇ。 しかもその絹旗って子とはほとんど面識が無い。ほぼ無関係だ。 つまり敵は、俺の近くにいる人間なら、誰彼構わず平気で巻き込むようなクソ野郎だってことだ。」 「お前さんがハワイで戦り合った魔術師はどうなのよ? 確かグレムリンの中にそういう魔術を使うヤツがいたはずよな。」 「いや、サローニャじゃないと思う。 アイツは大勢の人間を一度に操れないし、そもそもこんなことできる状態じゃないからな。 ステイルは何か心当たり無いか?」 「その手の魔術師なら何人か知っているが……学園都市に来ているとは考えにくいね。 それ以前に、土御門すら簡単に操るヤツが動いているなら、必要悪の教会に何の情報も入ってこないのはおかしい。 となると犯人は………」 「能力者…か?」 「その可能性が高いと言っているだけさ。 犯人が意図的に情報を遮断しているかもしれないから、断定はできないけどね。」 「結局は何も分からないってことか……」 「とりあえず僕は、吸血殺しの子に、魔力の痕跡が無いか調べてくるよ。 魔術を使ったのなら何か分かるはずだ。 ただ、もしこれが能力によるものなら僕にはお手上げだけどね。」 「なら俺は、怪しそうな能力者を洗い出しておくのよ。 心配しなさんな。隠密行動は天草式の十八番なのよ。」 「じゃあ俺は、引き続き美琴と恋人のフリをしながら、敵の出方をうかがう。 二人とも、くれぐれも気をつけてくれよ!」 「……その前に、本当にあの子とは恋人の『フリ』なのよな?」 「ああ、美琴もそれを承諾してくれてる。」 「それを聞いて安心したのよ。(後で女教皇様と五和に言ってやろう。)」 上条はそこで二人と別れた。 (それにしても、あの神裂まで洗脳するとは……敵がそれだけ強力ってことか。 もしこの状態が、魔術や能力なんかじゃなかったら、上条さんはどれだけ幸せ者か…… なんて、あるわけ無いよな……ははは…不幸だ……) 確かに、お前の鈍感さは不幸だよ。 現実を幻想と勘違いし、その幻想すらもぶち殺すあたり、流石はフラグメイカーにしてフラグブレイカーである。 一方、男子チームとはまた違った緊張感に包まれている女子チーム。 とても気まずい。 御坂は、五和とレッサーは知っているが、他のメンバーは知らない。 というか、レッサーが上条と知り合いだったというのは驚きだが、今はまぁいい。 6人中3人の乳がデカイのもどうかと思うが、それもまぁいい。 御坂が上条から頼まれたことは、「この女性陣に事情を説明してくれ」というものだった。 上条の考えは、 「今、神裂達が抱えている感情は、何者かによる洗脳で植え付けられたモノ。 だからまずはそれを説明して、それでもダメなら『御坂が上条の彼女だ』と暴露して、諦めてもらう。」 というものなのだが、洗脳云々を知らない御坂にとって事情を説明するということは、 「上条の友人達に、『自分が上条の彼女です』と自ら自己紹介する」 ということなのだ。 最終的にやることは変わらないのだが、モチベーションが大きく違う。 (でででできるわけ無いでしょうがっ!!! どんな羞恥プレイなのよっ!!!) まぁ、御坂の性格なら当然こうなるだろう。 いつまでもマゴマゴモゴモゴしている御坂に痺れを切らしたのか、この中で一番男らしいシェリーが、 誰もが聞きにくかったことを直球で聞いてきた。 「………なぁ、お前は上条当麻のコレか?」 そう言いながら小指を突き立てるシェリー。 それを見て御坂は、真っ赤になりながらも小さく頷いた。 「ぁ…あの……その…えと………はい………」 それを聞き、大なり小なりショックを受ける乙女達。 (何だ…やっぱりか……来て損したわね………) (そりゃそうですよね……彼になら、彼女の一人くらいいてもおかしくねぇってな話ですよ………) (や、やはり祝福するべきですよね……しかし、何故こうも胸が痛むのでしょう…?) (諦める…べき……なので…ございましょうか………) (あー!! 私の完璧な「人類イギリスに補完計画」がぁ~~~!! ……ん? それなら彼女さんも一緒に働いてもらえばいいんじゃないですか? すごい閃き!! レッサー天才!!) 一部さほどショックを受けていない人物もいるが、それはまぁ特例だ。 特に、「上条のためなら死んでも構わない」と本気で思っている五和などは、 「あ……は……ははは…は………」 完全に放心状態だ。そして危険な状態でもある。 アックア戦を思い出してもらえばお分かりになると思うが、彼女はヤンデレになれる才能を秘めている。 が、別になって欲しい訳ではない。 彼女には、殺した両親を埋めるために巨大な穴を掘ってほしいわけでも、 腹を掻っ捌いて、妊娠しているかどうか確認してほしいわけでもないのだ。 と、そんな状況の中、男子チームから一人になった上条が、ノコノコ歩いて来やがった。 コイツのせいでえらい騒ぎである。 上条は神裂達の顔を一通り見るが、やはり様子がおかしい。 (やっぱりダメだったか……) ダメなのはお前の頭なのだが。 上条は絹旗の例もあるため、一人一人の頭を撫でてみた。 しかし、彼女たちが顔を赤くするばかりで、幻想殺しは一向に反応しない。 今回も姫神たちの時のように不発したらしい。 上条は溜息をついた後、御坂の肩に手を回しこう言った。 「みんな、もう聞いたとは思うが、俺はこの美琴と付き合っているんだ。 だからみんなの気持ちには応えられない。本当にゴメンな。」 あの鈍感だった上条からは、想像もつかないような衝撃の言葉が、その本人の口から出てきた。 御坂から聞いたのとは訳が違う。 想い人である上条本人から聞くというのは、先程とは比べ物にならないくらいショックなのだ。 アニェーゼはうっすら涙を浮かべ、五和は走り去ってしまった。 奇しくも教室で起こったことを、そのまま再現する形になったのだ。 これが全て勘違いによるものなのだから、彼女たちも浮かばれない。 「ま、まぁそういうことらしいので、今日はもうお開きってことでいいんじゃないですか!?」 重い沈黙に耐えかねて、レッサーがこの場を何とかしようとする。 ここで「人類イギリスに補完計画」がどうとか言わないあたり、流石のレッサーも空気を読んだようだ。 レッサーの言葉を聞き、一人、また一人と彼女達はこの場を離れていく。 最後に神裂が、 「幸せに……なってくださいね………」 と言っていたのが、妙に印象的だった。 取り残された二人はしばらく沈黙し、再び思いにふけていた。 (今のってやっぱり、みんなコイツのことが好きだったってことよね……… あたしなんかで本当にいいのかな……ううん! コイツが選んでくれたんだもんね! 自信持たなきゃ!! か、か、彼女として!!!) 一方、上条も思うところがあるようだ。 (教室のことといい、さっきといい……明らかに俺を狙ってるよな…… となると美琴を巻き込むのはやっぱ危険か? いやでも、美琴が一緒にいないと「恋人がいる」って言い訳はできないし………) 悩んだ上条は、改めて御坂に決定権を委ねることにした。 断られたらその時はその時だ。 「美琴!」 「ひゃ、ひゃいっ!!?」 突然呼ばれて御坂は飛び上がった。 「こっちから頼んでおいてなんなんだけどさ……その、本当にいいのか? 俺の恋人(役)なんて……色々危険なこともあるしさ。」 危険。その言葉に御坂はピクッとする。 この男がいままでどれだけ危険な戦いをしてきたのか御坂は知っている。 自分の命を省みず、どれだけ多くの人を救ってきたのかを知っている。 かくいう御坂だって、その中の一人なのだから。 記憶を失おうが、右腕をぶった切られようが、何度死に掛けても彼は足を止めなかった。 そんな彼だからこそ、多くの女性が心惹かれたのだろう。 「もし美琴が嫌だったらさ、今からでも考え直して―――」 「いや!!!」 それまでのおどおどした態度とは一変し、御坂は自分の気持ちをはっきりと言葉にした。 「考え直せって何よ!! アンタがあたしのこと、ひ、必要って言ったんじゃない!! アンタの性格なんて百も承知なのよっ!! これからだってアンタは危険なことに首を突っ込むんでしょ!? ホントは止めたいけどアンタは止まんないんでしょ!? 分かってんのよそれくらい!! だからあたしが支えてやるっつってんの!! そういうところも受け入れてアンタのか、か、彼女になるって言ってんのよ!!! それくらい分かりなさいよこの馬鹿!!」 息を切らしながらも御坂は自分の気持ちを曝け出した。 それは全く嘘偽りの無い、純粋な彼女の想いである。 素直になれない彼女がここまで言うには、相当の勇気が必要だっただろう。 それを聞いた上条は、 (美琴……そこまで俺を心配してくれてたのか………俺はいい友達を持ったなぁ……) などと、もうお前マジで死んだ方がいいんじゃないかと言いたくなるような感想を述べているが、 上条自身も気付いていない。 赤くなりながらも自分への想いをぶちまけた御坂を見て、 自分の頬もほんのり赤みを帯びていることに、彼は気付いていない――― 「よ、よし! じゃあ何の問題も無いってことで、気を取り直してこれからちょっと街をぶらつくか!! (ステイル達の連絡はまだだ。 俺達にできるのはカップルのフリして敵の出方を待つことだけだもんな。)」 「そ、それって、デ、デートって…こと?」 「そりゃそうだろ。恋人(役)なんだから、デートしない方が不自然だろ?」 「そ、そうよね!! ここ、恋人だもんね!!」 こうして二人は公園を後にした。 この何ともいえない、アンジャッシュのコント状態はまだまだ続くようだ。 「あっ、ポケットに入れっぱなしだったけど……いちごおでん食べるか?」 「…いや、いらない………」 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸な都市伝説